26-7 幕間:調査戦団
調査戦団と創から呼ばれた者たちは、15日の時間をかけ、出雲の国に入った。
道中では天候に恵まれ、苦労する事は特になく、余裕を持って調査を開始する事となった。
「団長。例の大岩の周辺で聞き込みを行いましたが、やはり巫女の情報はありません。
また、坂周辺に巫女が潜伏している可能性はほぼ無いかと思われます」
「そうか。では坂にある、あの大岩を動かしてみるか」
「あのあたり、魔力的にはなんの反応もありませんよ?」
「上の命令だ。大した理由もなく放棄するわけにはいかん」
伝説では、伊邪那岐が大岩を使って現世とあの世を隔てたと言われている。
なので創からは、大岩を動かす事で道ができるのではないかと、そう言われていた。
「これで現世とあの世が繋がったら、俺たちのせいですねー」
「ま、その時はその時だろう。そうなったのなら、もう一度岩を動かして閉ざすだけだな」
罰当たりではないかと思っているが、他に何か手がかりがあるわけでもない。
そして、魔法使いたちがこの辺りは普通の土地だと報告していたので、本気で現世とあの世が繋がるとは思っていない。
団長は団員と軽口を叩き合いながら、岩を動かす作業を見守っていた。
「行きます!」
大岩と言われても、身体能力の高い団員が三人もいれば動かせる程度の岩でしかなかった。
それが二つ並んでいるので、門を開けるように動かしていく。
大岩があるのは崖の近くで、足場が悪いから、作業は慎重に進められていた。
変化が起きたのは、岩と岩の間が1mほどになった頃である。
周辺を警戒・監視していた魔法使いが、警告の声をあげる。
「作業を中断してくれ! 何かが起きる! 全員、戦闘準備!!」
この場にいたほとんどの者は、戦闘要員だ。自分で危険を察知できなくとも、警告を受ければ反射的に戦闘態勢をとる。
全員の視線は、大岩とその周辺に向けられていた。
そこで、魔法使いでも何が起きているのか理解できない光景が展開される。
「崖が消えた? 霧が出て……?
っ! 岩を戻せ! 早く!」
「一班、岩の間にブドウとタケノコを投げろ!」
彼らから見て、大岩の向こうは崖であった。
しかし崖が消え失せ、本当に黄泉の国が現れていた。
更に霧が立ち込めだして、視界を悪くする。
団長はすぐに危険と察し、大岩を元に戻すように指示を出す。
また、団長補佐が黄泉の軍勢を足止めするというブドウとタケノコを投げるよう、一班に指示を出した。そしてなにも言われずとも、続く二班も桃を構え、いつでも投げられるようにする。
だが、全ては遅かった。
岩の合間、そこから出てきたのは黄泉の軍勢であって、黄泉の軍勢ではない。
ただの亡者ではなく、ドール、そしてゴーレムの軍勢だったのだ。
神話とは違う展開に、備えは失敗だった。
大岩はこじ開けられ、彼らは軍勢に飲み込まれるしかなかった。