26-6 調査戦団、出発
当たり前の話として、自分はあまり動かない。
指示を出し、安全な村で待機である。
間違っても、俺は巫女と直接対決などしない。そういうのは部下のお仕事である。
ロケット砲などが完成して、出番があるというなら、俺が出掛ける可能性もある。
だがそういった、俺しか出来ない何かを求められるまでは、出番など無いのだ。他の誰かにお願いする方が上手く行く。
俺が出張るのは最終手段。いきなりやる事ではないのだ。
そんなわけで、現地の調査と、もしかしたら遭遇するかもしれない巫女と戦うメンバーを用意して、出雲の国に送り出した。
今回は陸路のため、船の出番はない。
越前の国に行って、そこから乗るというのも考えたが、陸路で良いと言われたのでそのようにした。
まぁ、船で行けば目立つし、あんまり良いことではないよな。極めて常識的な判断である。
この「調査戦団」、規模としては200人ぐらいと、そこそこの人数である。
軍一つと、情報収集に下忍衆、他の戦闘要員に荷運びや連絡用の仲間が加わり、この人数になる。
北海道行きの半数程度だが、陸路だと規模を大きくすることで足が鈍るので、ここまで絞ることにした。
道中の宿とか、食い物と水の補給とか。
海を行くときとは違う事に気を使わなきゃいけないので大変なのだ。
鉄道や高速道路がない時代は、海路が一番優秀な移動手段なんだよなぁ。
その辺り、もっと整備されると楽になるけど、そうなると敵の行動範囲も遥かに広がるので、痛し痒しと言ったところか。
空路?
飛行機が完成していないからね。
それに、完成待ちの飛行機だって、少人数用のものだから。
ジャンボジェットのような、大人数を一度に運べる飛行機は、あと10年研究させても厳しいどころか、不可能だと思うよ。基本的な理論や設計図があっても、それを作る設備とか環境が整ってないから。
空港の整備は飛行船の為にやっているけどね、そこまで一足飛びに技術は進歩しないよ。
土台になるものが全然足りていないんだよな。
調査戦団を見送ると、夏鈴がポツリと不吉な言葉を漏らした。
「旦那様って、ちゃんと私たち下の者に仕事を割り振りますけど……大変そうな何かが起きて、よく駆り出されますよね。北海道の時のように。
今回も、また……」
胸に赤ちゃんを抱きながら、どこか遠くを見るような顔で、そんな事を呟いていた。
とりあえず、聞かなかったことにした。
お約束だと思うし、また出番が回ってきそうだけどね。まだ決まった訳じゃないから。
伊勢の集落を潰したことで巫女の行動に不確定要素が出てきたけど、何か厄介事が起きると決まった訳じゃないから。
怖いことは、言わないで欲しいな。