26-4 集まる情報
美濃と尾張の両国では、巫女の姿は見られなかったようだ。
国内にそのような者の姿は無かったと、伊勢に近い村や町から報告が上がっている。
俺の手の者らも、東日本では巫女を見ていないと、そのように言っている。
逆に、西日本には目撃者が多数いた。
近江の国からさらに西、丹波や播磨の国では、その姿が確認されている。
女の一人旅、しかも黒を多用する奇抜な色合いの服だからと、記憶に残った人がたくさんいたのだ。
目撃情報から計算してみたが、移動速度は1日50㎞と、歩きにしてはかなり早いが常識の範囲内。カード能力を使えば荷物が少なくなるので、凄いとは思わない。
一人旅なので、足手まといがいない分、進みも早いだろうよ。
「一人旅ってのは、気になるよな」
「召喚をしない理由。もしかしたらもなにも、巫女は血縁ではなく、カード能力を持っていないのでしょうね」
「美星がカードになっていない段階で、その可能性が高いんだよな」
以前は、巫女もカードクリエイターだと思っていた。
だが、情報が集まるにつれ、その可能性が低くなっている。
巫女自身がカードクリエイターだと、いくつか矛盾した行動を取っているようにも思えるんだよね。
使えば使うほど、効率よく強化できるカードモンスターを侍らせていないのが、その一番の理由だ。
カードクリエイターであれば、側近になりそうな仲間を作っておくと思うんだよ。
伊勢では姿を見せていないだけ、そんな風に考えていたけど、常時一人のようだし、その可能性も低そうだ。
俺が日本各地に人をやっているように、巫女も人を送り込んでいて、その余裕がないって可能性もあるけど……クランとか、スタックしたカードを使えばすむ話だし。やらない理由としては弱いよな。
カードがスタックできること自体は、清音や美星らも知っていたし、巫女が知らないという可能性はない。
もしもブラフなのだとしたら。相当非効率的で迂遠な性格をしているよな。趣味人が過ぎる。
一応、可能性は低くとも、頭の片隅には置いておくけどね。現段階で、カードクリエイターが敵にいるということは無さそうだ。
それは、可能性としてものすごく低いものだけど。
世の中には『補食封印』という技術があってだね。カードクリエイターの能力が血統により引き継がれるなら、能力持ちを量産して、食わせて、能力獲得とか、そんな外道な方法も考えられるんだよね。
いや、フラグ建築とかではなく、本当に低い可能性としてそういう事も可能だと、そう言いたいだけなんだよ。
本当に、そんなことを期待しているわけではないんだよ。
あって欲しくはないけどさ、出来なくもないのは確かだろう?