25-21 上谷・真⑤
路地裏、物陰で夏鈴と春華に警戒心が足りないと説教をされていると、いつの間にか周囲を囲まれていた。
どうやら釣りは成功したらしい。
囮ではなく俺の所に来たのは残念だが、それは構うまい。
こんな分かりやすい餌に食らいつくのだから、相手はそうとう焦っている様だし。
「練度が低い! 雑魚ですね!」
「数で攻め切るつもりですか。甘すぎです!」
現れた連中は、ここまで近付いた技量はともかく、戦闘能力が低めだった。夏鈴や春華に勝てないのは言うに及ばず、俺でも簡単に倒せる程度の実力だった。
あまりにも弱いので、もしかしたら、操られてしまった一般人かもしれない。念のためにカード化で確認してみるが、そんなことは無かった。セーフ。
俺たち3人は10人以上を倒した。
親衛隊は上谷が近くにいるという前提で周囲を走り回っており、外で敵と戦っている事だろう。
敵と戦う事に慣れ、作業となった瞬間、その隙を突くように強いのが現れた。
倒した、そう思った瞬間を狙っての事だったんだろうけど。
「この程度で!」
春華が強めの敵をあっさり下し、事なきを得る。
春華は元が攻撃系ではなく防御系だ。その程度のフェイントには引っかからない。そこでさらに本命、という2重トラップにもなっていなかったため、敵の策は不発に終わる。
何と言うか、舐められすぎではないかと言いたくなる。
それとも、だ。
相手の手札に、ロクなのが残っていないだけかもしれない。
上谷は配下にもカードクリエイターが居たし、彼女をメインで使っていたのなら、本当に強力なカードは彼女が使うようにしていた可能性だってある。
あの少女はまだ召喚していないが、彼女の手札が雑魚札ばかり、という事は無いだろうし。戦闘で使える強力なカードは、思った以上に少ない可能性がある。
そうやって敵を倒し続け、路地裏に30人分の死体が折り重なった頃。
「御主人様。上谷を捕らえました」
「さすがだな。五代らに任せて良かった」
「お誉めに預かり恐悦至極」
下忍衆を率いた上忍が、俺に吉報をもたらした。
上忍の五代の足元は、腕をへし折られ苦悶に歪む少女が一人、鎖で縛られている。
カード化で確認してみると、他人のカードモンスターではなく、ただ拒絶されるような反応により失敗。
今度こそ、本物の上谷であった。
見た目は、10歳かそこらであったが。
……幼女とは言わないが、こんな小娘かよ。