25-18 上谷・真②
安全を確保しながらの移動は時間がかかったので、俺に一撃を入れようとした敵の撃破までは終わったようだ。
親衛隊の5人は一人も欠けることなく勝利して、こちらに合流した。
「敵、全て討伐完了です」
「よくやった。さすがだな」
俺たちはこの場では勝利を収めた。
だが、本命は別にある。
襲って来た敵がどうこうではなく、それを召喚している本物の上谷をどうにかしたいと、そういう話だからだ。
末端を潰したところで、あまり意味は無いのだ。
「旦那様。そろそろ敵も打ち止めではないでしょうか?」
「そうだな。俺と同じなら、もう50枚の制限に引っ掛かったとしても不思議はない。
けど、なぁ」
俺の能力にはカード利用枠の上限として、50枚までという制限がある。
この制限が相手も同じであれば、これまで倒して来た敵の数などから、魔力より先に枠が尽きるという事も考えられる。
強力なカードは使ってから1ヶ月とか、長い間枠を食い続けるのだ。
これだけボコボコにしたのだからしばらく何も召喚できなくなった事だろう。
上谷が、一人であれば。
「あの女の子のように、上谷がまだカードクリエイターのカードを持っている可能性がある。
コピーとかしていないとは限らないだろう? 油断はできないよ」
「そうでした。申し訳ありません」
「いいさ。それよりも、上谷の身柄を押さえる事は可能だと思うか?」
「難しいですね。町の中は、どうしても隠れる側が有利ですから。相手の顔を知らない以上、厳しいと見ています」
「俺はやらないけど、金のコピーも簡単だからな」
俺たちは、現状の確認を行う。
上谷は消耗しただろうが、こちらに面が割れていない以上、逃げ果せることは難しくない。
金を複製し、適当な『ヒューマン・スレイブ』に買い物に行かせれば生活する事は簡単だからだ。
あとはカード利用枠が完全回復するのを待てばいい。
俺たちはそれを追いかけようにも、相手の顔も分からず、大きな動きが無ければどこにいるかも分からない状態なわけで。打つ手無し、といった状態なのである。
「釧路近辺に居るっていうのだけは間違いないから。地道に頑張るしかないね。
下忍衆も呼んで、釧路の辺りを探らせるしかないかな」
「長期滞在ですか? 咲耶は大丈夫でしょうか。あの子の事が心配ですよ」
「大丈夫だよ。寂しいのは確かだけどね」
こんな時は焦った方が負け。
俺は船の修理を始め、やるべき事がたくさんあるので、それらを熟しつつ、上谷の行方を追う事に決めた。
ここに連れて来なかった咲耶の事が少し心配になるが、あちらはあちらで、守りを固めてある。
そうそう変な事にはならないだろう。
島の守りは万全だし、後れをとる事など無いさ。