25-16上谷の処遇②
上谷が吸魔晶石で大量に魔力を吸われ続けたままでは、まともに話ができない。
ボディチェックでカードを取り上げ、それから鎖の量を半分に減らした。
カード無しでどこまで魔法を使えるかは分からないが、そこまで強力な魔法を使えるということは無いだろうし、護衛もいるので危険度は低い。
これは油断では無く、余裕がある状態だ。
鎖の量を減らし、しばらくすると、上谷の魔力が僅かだが回復していくようになった。
そして彼女はようやく喋れるようになったが。
「嫌……殺さないで。痛いのは嫌……。死にたくない……」
無表情で、そんな事を呟いていた。
意識がはっきりしていることと、会話が通じることは別である。
上谷の精神状態はあまり良くないようで、まともな意思疎通など、試すだけ無駄だろう。
ふむ。
俺は少し考えたが、本当に追い込まれたような精神状態というのは都合がいい。
少し優しい言葉を掛けて、カードにしてしまおう。
その後に話を聞けば良いか。
「俺に従属するなら、痛いことなんてしなくても良くなるよ。どうする?」
「助けて……。なんでもするから」
上谷はこちらの言葉に反応した。
表情は変わらないが、俺を見て助けを求めている。
都合の良い状況だと思いつつも、俺は上谷をカード化しようとしたが。
「弾かれる? 拒否されている訳じゃなくて――全周囲を警戒!! 敵はまだいる!!」
上谷のカード化に失敗した俺は、すぐに現状の拙さに思い至った。
カード化を拒否された訳では無く、「弾かれた」のだ。
おそらくこいつは、他の誰かにカード化された誰かだ。
ここにいる上谷は、本物の上谷じゃない。
ただの、スケープゴート。
本物の上谷は、ここにいる彼女を暴力で支配している、何者かだ。
俺が夏鈴を代理人にしているように、敵はこの子を表に立てて裏で動いていた!
一度はカード化に失敗したが、それでもなんとかしてやろうと、俺は捕まえた彼女を、もう一度カード化しようとする。
カード化の仕様が正確に分かる訳ではないけど、魔力を消費して行なうのだ。力押しで押し切ることも不可能ではないはず。
「――出来た!!」
上谷の影武者だったカードクリエイターの少女。
魔力の7割以上を使ってしまったが、少女を何とか解放できた。そのまま俺のカードとして救出した瞬間。
「ご主人様!!」
激しく金属がぶつかり合う音が響き渡る。
壁をぶち抜いた襲撃者の一撃が、春華の持つ盾を打つのだった。