24-23 再挑戦の権利
夏鈴とは何度か話し合いをした。
その中で妥協点を探した結果、北海道で戦うのは戦力をもっと拡充させてから、という事で落ち着いた。
「相手がどのような手段を用いてくるかも分かりませんが、少なくとも、あちらに派遣した軍を壊滅させるだけの戦力がある事は間違いないんです。それも、中陸奥の精兵が時間を稼いだ後に、なのですよ。
旦那様は相手を軽く考えすぎです」
こう言われると、ぐうの音も出ない。
相手が強いというのは間違いないので、「行ったところで返り討ちに遭う可能性の方が高い」となれば、許可など出したくないだろう。
特に、お互いがカードクリエイターであるなら、間違いなくカードモンスターよりもその召喚者を殺しにかかることが容易に想像できる。
命のリスクは、「ちょっと」ではなく「かなり高い」だろう。
感情論で「北海道に行かなくては」と思うのは確かだが、「行った後に何が出来るのか」を軽視するのはただの馬鹿だ。
俺はもっと、慎重に動くべき立場だ。
「そんな訳で、軍のみんなには今まで以上に強くなってもらいたい。相手と同数であれば、圧倒できるほどに」
北海道に送った軍のカードをまた召喚し、演説をしてみた。
次の遠征は、かなりやられた軍のみんなにとってはリベンジとなる。
その遠征を行うのにはパワーアップが必要だと言って、カードの強化はもちろん、調練による成長を期待していると言っておく。
彼らの中には全滅して記憶をロストしている者もいるが、過半数は記憶をそのまま残しており、再挑戦のチャンスに沸き立っている。
自分が殺された恨みを晴らすべく、手にした武器を天に掲げ、野太い声で叫んでいた。男女混合なんだけどね。
負けたことに臆している様子がないのは良いことかな。
既存の軍はこれでいいとして、あとは新しく補充した『ヒューマン・スレイブ』の軍をどうするか考えよう。
伊勢で稼いだカードだけど、ここで出し惜しみするのは良くない。新たな戦力として育てるつもりである。
追加したのは軍が3つ、戦隊4つ、あとはバラで20枚。
「遠近バランス良く揃えるのがいいかな」
「そうですね。ああ、うち1枚は防御よりの軍を希望します。乱戦に強く、生存に重きを置いた軍があると、戦術に幅が広がるので」
夏鈴と相談しつつ、今後の方向性を決める。
大規模線に備え、戦隊を伝令兵にしたりと、念のための編成を意識する。
そんなことをやっていたら、いつしか冬が終わり、季節は春になっていた。