24-21 もう一人のカードクリエイター⑤
北海道の話は、すぐに結論が出ない。
なので、ここはいったん話を横に置き、建設的な相談をすることにした。
「伊勢で見つけたカードの事なんだけど」
「はぁ。持って帰って来なかったカードのお話ですよね。現物を見ていないので、私からは何も言えないような気もしますが」
話題を、伊勢にいたというカードクリエイターの話に移す。
「仕方が無いだろう。あのカードはあの土地の、墓に入れてきたんだから」
「実用性のあるカードでしたら?」
「それでも、だよ。人として、その尊厳を貶めるような真似はしたくない」
なお、あの場所で見つけたカードについては、箱に入れて埋めて残してきた。
で、墓標として卒塔婆のように棒を立てておいた。
初期カードで特に必要ないものだったからだと思われたが、たとえ良いカードであっても、俺は残してきたよ。
あの土地は殺された「彼」が切り開いた場所で、俺がブチ殺した連中のものではない。
彼の魂はあの土地にあり、その死は、尊厳は穢されていい物ではない。
あそこでカードを拾っていけば、俺はあの下衆どもの同類になってしまうと思ったのだ。
「分かるような、分からないような。いえ、旦那様が良いと言うなら、それで良いのですが」
男の感傷は、女性には理解されにくい。
夏鈴には変な顔をされてしまった。
「それよりも、伊勢にいた彼と、北海道にいるカードクリエイター。関連性はあると思う?」
「あるのではありませんか? ここに来て雨後の筍のようにカードクリエイターが増殖したとも思いませんし。
伊勢の連中は地元では暴れないようにしていましたから、わざわざ北海道まで行って人殺しをしたり、人体実験をしたりする可能性はそこまで低くないと思います」
別人という可能性はあるけど、現状では同一人物ではないかと思う。
彼が殺されたのは30年ほど前の話だが、娘さんがいたというし、そこから孫でも生まれていれば、北海道で暴れている馬鹿がいたとしてもおかしくは無い。
ただまぁ、一番大事なのは、可能性の話なんだけどね。
俺の能力が、子供や孫に受け継がれる、その可能性。
もしも子供に能力が受け継がれるなら、モンスター系のカード以外は引き継がせるのもいいかな。タイラントボアだけはどうしようかと思うが、それは考えず横に置くけど。
後継者がいるなら、カードに頼ったなにかだって、俺がいなくなっても大きな問題にならないだろう。
引き継ぎを前提とした行動をとることができるようになるな。
ただ、子供全員に能力が受け継がれるのか?
それとも、長子のみに受け継がれるのか?
確かめる手段は無いが、それ次第では兄弟血みどろの争いの種になるな。