24-19 もう一人のカードクリエイター③
伊勢のゴタゴタに片を付け、村に戻ってきた。
こっちは終わったけど、北海道戦線は終わるまでまだ時間がかかる。
けど、これで二正面作戦は考えずに済む。
いくつかあった懸念の一つはこれで消え、俺は少し安心した。
その代わり、伊勢で見つけたカードと、その使い手の情報。
死んでしまった「彼」の話は俺の心に深い楔を打ち込んだ。
あんな話を聞かされ、冷静でいる事は難しい。
今いる仲間と、慕ってくれる人たち。
利害関係の付き合いの知り合いも増えたが、現状で良い関係を持った人が俺を害する事を選ぶとは思っていない。
ただ、俺を殺す事で利益を得られる人というのは必ず何処かに居て、そんな連中に俺が殺されないとも限らない。
味方しかいない優しい世界など、御伽噺の中だって早々あるものではない。
敵は俺が気がつかないだけで、いつでもどこでも居るんだよな。
死にたくない。
心のどこかから湧いてくる、謎の衝動で叫びたくなる。
もともと死にたくないという考えは自分の頭の中にあったけど、死んだカードクリエイターの話を聞いたことで、その思いはより強くなっていく。
なにか、こう、忘れてしまった自分が悲鳴を上げているような、そんな気がするのだ。
そんな漠然とした不安を抱えたまま、冬が終わりを告げる。
美濃の国には桜の名所がいくつもあるが、そこに花見客が訪れるような季節になる。
北海道の戦線は、こちらが優位を保ったまま、敵を北へと追い詰めていく。
拐われた人達は見付からないままだが、それでも自称革命家とその仲間たちを徐々に削る。
大きな被害が出たという話もなく、堅実に戦っているらしい。
北海道でも桜が咲く頃には全部終わる。
そんなことを考えていたが。
「夏鈴。北に送った仲間たちが……全滅した」
カードを通してわかる、仲間の死。
次々に仲間が殺されていくのが分かり、俺は損耗率が八割を超えたところで生き残りは不可能と判断し、何枚かの召喚を解除した。
仲間の中には、中陸奥の国の兵士の盾になっている者もいただろうし、カードに戻したことで彼らを死なせてしまったかもしれないが、この場面では情報の持ち帰りを優先した。
一度に全員戻したわけではないが、戦場は余計な混乱をしただろう。そこはすまないと思いつつも、それよりも何が起きたのかを知りたい。
俺はリキャストタイムが終わっている者を選び、召喚を行う。
「敵が、居るはずのない場所から、続々と現れて……。
まるで、創様が軍を召喚したときのような用兵をされたのです。
後方が不意を打たれ、そのまま為す術もなく、お味方は壊走しました」