24-8 男の言い分
俺と夏鈴の夫婦喧嘩は、昼過ぎに始まり、その日の夜に終わりを告げた。
「ごめんなさい」
終わったのは、夏鈴が早々に折れてくれたからだ。
けど、素直に喜べない状態である。
感情の起伏が激しい状態だからか、夏鈴の感情は天を衝くほどに上がったが一気に下降し、大地に大穴をあけたようなものである。
今度は下降し過ぎて、引っ張り上げないといけなくなっている。
「まぁ、どちらも悪かった。そうやって終わらせないか?」
「いえ……ええ、そうですね。意地を張っても、良い事はありませんよね」
「うん。だから、何日も家を空けてごめんな、夏鈴」
「私も、すみませんでした。ちゃんと話し合って、外に行ってもらうべきでした。旦那様、申し訳ありません」
とりあえず、喧嘩両成敗。どっちも悪かったで一回区切ろう。そう提案する。
夏鈴は納得のいかない表情だったが、渋々それを受け入れた。
お互いに頭を下げ、これで話は終わり、だったら良かったんだけどね。
話を進めるために、こちらの提案に乗っただけかな。
受け入れたのは表面だけで、不満だらけという表情を隠していない。
何が駄目なのか。
俺はそこがよく分からない。
たった20日ほどずっと家にいて、ほんの10日ほど家を空けただけ。
さすがにそんな間抜けなことを考えてはいないが、そこまで怒られる事なのか、そんな事は考えてしまう。
これは俺が男だからだ。
女ではないから、一生、妊娠中の不安とか心細さとか、そういったものを理解できない。
分からない事は分からないままなので、分からないなりにどうにかするしかない。
分かったふり、分かったつもりだとタチが悪いからね。
出来る事は、今度は拒まれても一緒にいるぐらいの気概を持つことかな?
うん。
俺のようなのは、それぐらい強引な方がいいかな。
それはそれで失敗するだろうけど、今回みたいにあっさり距離をとる方が問題になりそうだし。
深く考えすぎるとハマるからね。
ハマって、不覚をとるんだよ。
問題は、現在進行形で不機嫌な夏鈴をどうするかだよね。
謝って済む問題じゃないとか、困るんだよ。
できれば、何が嫌で何をして欲しいとか、もっとストレートに言って欲しい。
言ってくれれば分かることを、言い難いと隠されては、歩み寄りが難しいんだ。
こっちは勘が悪いんだから、察して自分で気が付けと言われても、出来ないんだよ。