24-4 開発①
妊娠して一ヶ月に満たない妻に、三行半ではないが、「外で働いて来い穀潰し」的な扱いを受けてしまった。
別に収入に不安があるわけではないけど、確かに何もしないでいるのはあまり良くない。
ここは心を入れ替え、休んだ分だけガッツリと働くべきだろう。
そんな訳で三河の国と尾張の国の間にある島にやって来た。
両国のパワーバランスの調整という名目で送られた、篠島。
要は「もう喧嘩しないし、それを分かりやすくみんなに広めるから協力してね」という事だ。
俺への提供とはなっているが、実際に両国ともに利用しているし、「どちらの国にも属さない緩衝地帯」として活用されている節がある。
この島は、俺のものであって、俺だけのものではないという訳であった。
「けど、好きにやらせてもらうけどね」
「いいんですかい?」
「勿論。建前だろうと、使い倒せばいい。俺の島っていう名目がある以上、これからやる事を止められる筋合いはない」
俺は、島の開発に着手することにした。
これまでも家を置き人を配置するなど、多少は手を加えていたけど、本格的な開発をしてきたわけじゃない。
今度は、もっといろいろとやっていくつもりだ。
「ここからここまでを平らにして。そう、コンクリートで固めるから。
そっちは等間隔に電灯を置いて――いや、ちゃんと発電機も用意したから。いや、三河にも無いとか言われてもね」
最初に手を付けるのは、飛行船が本格稼働したときに備えての、空港整備。
地面を平らにするのと、空からでも分かるように電飾を施すだけの、簡単なものだけどね。
実際は飛行船側と無線通信できた方がいいんだけど、さすがにそれはまだ実現していない。
無線通信は、地味に難易度が高い。
カードによる進化も、何故か上手くいかないので、お手上げである。
……俺が知っている知識でまだ使えそうなのは、傘の骨組みを利用したラジオ受信機の作り方ぐらいである。発信する側を作れない時点で終了だ。
ただ、無線通信に関してだけど、尾張の国の蔵書に、良さそうな本が数冊見付かった。
俺も目を通してみたけど、初期のラジオ通信について書かれた本で、東京タワーを含む電波塔の構造なども記載されていた。
その他の本の知識と組み合わせれば、情報発信局を作る事も可能なように思える。
しかし電波塔を作るには大量の資材が必要なので、また色々と、鉄以外の金属を作らないと駄目なんだよね。
鉄の安定供給はできるけど、その他金属についてはまだ不十分。
一つの炉で複数の金属を扱うのは基本的にNGなので、炉の数を増やさないとなぁ。
カードのコピーだと、また魔力が足りなくなるよな。
焦っては駄目だと分かるけど、新しい技術に手が出せそうと思うと、つい気が急いてしまう。
資材が揃っても人手が要るし、大っぴらにカード能力を見せるつもりは今のところ無いし。能力をバラす覚悟が無ければ、焦ったところでどうにでもなる事ではない。
有限の魔力を上手く使って、何もかもが中途半端にならないよう、上手く立ち回ればいいんだろうけど。
気の多いタイプである俺に、それはかなり難しい話なんだよね。