24-3 授かりもの③
夏鈴妊娠が発覚してから20日ほど。
俺は夏鈴が休んでいるであろう家の前で立ち尽くす。
今は冬場で、外の風は冷たい。
どうしようか?
そんなことを考えるけど、どうすればいいか、悩んでしまう。
一言で言えば、家を追い出された。
まぁ、やらかした? 何もしていなかったから仕方が無いわけだが。
仕事らしい仕事を一切せず、家にいたのが駄目だったらしい。
最初の数日は周辺を整えるために走り回っていたんだけどね。それが終わってからはずっと家にいた。
俺の一番の仕事であるカードの強化などは家でもできるし、それで問題無いと思っていたんだけど、夏鈴は外に出なくなった俺が不満らしい。朝一番、とてもいい笑顔で追い出された。
ちょっと、寂しい。
「創様。ここにいても仕方がありません。工廠の方にでも行きませんか?」
「そう、だね。そうしようか」
しばらく立ち尽くしていると、護衛の一人が工廠、エンジニアらがいる所へ行ってはどうかと話を持ち掛けてきた。
寒空の下にいつまでも居ると風邪をひくかもしれないし、立っているだけなど時間の無駄だ。何かしら、行動に移した方がいい。
俺は護衛を追加すると、その案内で工廠まで足を運ぶことにした。
「夏鈴様、創様をとうとう追い出したのか!? よっしゃ! 勝った!!」
「1ヶ月持たなかった! 畜生!」
工廠に足を運ぶと、悲喜交々、とんでもない声が聞こえた。
状況から推測するに、俺がいつか家から追い出されるので、それがいつになるかで賭けをしていたようだ。
……何故だ?
「妊娠中は、愛を疑われてしまう可能性が高く、できるだけ一緒にいる方がいいと言われたから、そうしていただけなのに」
「男は外で働いて金を稼ぐ。夏鈴様は古風なところがあるから、そうするべきだと思ったんでしょうな」
俺が愚痴を溢すと、近くにいた壮年のエンジニアがそんなことを言った。
言われてみれば、妻は子供を産んで一人前とか、そんなことを考えていそうな夏鈴だ。納得である。
「あと、一緒にいて嬉しいのは最初の数日、あとは適度に距離をとらないと、逆にウザいと思われ嫌われます」
「へ?」
「こういうのは、相手の表情を見て、適切なタイミングで距離をとるのが大事なんですよ。
少しは一人の時間を作って差し上げないと、人は疲弊します。
同性だけの時間なども大事ですね。ちょうど仲の良いご友人もいるようですから」
自身も子供がいるというエンジニアらが、色々と教えてくれる。
なんと言うか、今の俺はダメダメらしく、突っ込みどころ満載と。
仕方がないじゃないか。
初めての事なんだからさ、慣れてるとか以前の話なんだよ。