24-2 授かりもの②
種族差による妊娠期間の違いをわざわざ広めるつもりも無く。
俺は事実として「夏鈴が妊娠した。出産は半年後と予測される」とだけ知人に報告をした。
俺がやったのはそれだけの事であったが、その反応は劇的といえる。
ガソリン関係で人の出入りが慌ただしくなっていたところに、更に大きな爆弾が投下されたようなもので、ゴブニュート村はにわかに慌ただしさを増していた。
「夏鈴の姐御に会いたいだ? アポは取ってあるのか? 無いなら希望する日時を指定して、今日の所は帰りな」
「は? アポ無しで合わせる訳無ぇだろ。今は大事な時なんだよ。そんな簡単な事も分からねぇのか」
俺の耳に、家の外から声が聞こえる。
モヒカンがトレードマークの連中が、予定にない客を追い返している所のようだ。
彼らは俺を無関係な奴から守るために派遣された番人である。
妊娠した夏鈴の護衛という事で、三河の堀井組から応援を呼んだ。
人手を増やした方が良いという判断であり、お互いに人の行き来を作ることで交流を増やし、信頼関係を深める目的である。
護衛を外注するのは、頼んだ相手を信頼しています、という意思表示。
最終防衛ラインは自分でどうにかするが、早期迎撃ラインであれば多少の不備があっても気にしない。
そんな打算もあるが、ちゃんと仲が良いと言える相手を増やす事は大切なのだ。
こういった機会に仲を深めたい。
呼んだのは男女半々で合計20人。これから半年間、付きっ切りで世話と護衛をやらせる予定である。
夏鈴を任せるついでに、妊婦の世話の仕方など知らない俺の為、色々教えてもらおうと思っている。
妊婦さんへの注意事項とか、実はほとんど知らないんだよね。ハチミツが駄目とか、それぐらいを聞いた事があるだけなのだ。
ゴブニュート村からも人は呼んであるけどね。
俺たちが知らない注意事項とかがあっても不思議じゃないから。
手抜きをして流産でもされたら、死んでも死にきれないよ。
俺の家の周りは、最初は何もなかった。
だが、畑ができたり、番犬ならぬ守り狼が付いたりとしていたが、近くに行こうと思えばだれでもい雨でやって来られるような状態であった。
よって、この度はかなり大きなレイアウト変更を行い、家の周りに壁を作った。
壁の外から家が見えないのは防犯上問題があると言われるが、そもそも周りに民家の無い我が家の周りであれば、それでも問題ない。
大狼や戦闘部隊の3部隊以上が常に壁の内を守っているので、戦力に不足は無いはずだ。
防衛体制が壁の内に詰所と離れと倉庫ができたが、そういった建物があると死角ができるからそんなに好きじゃないんだよな。
でも、詰所が無いと、護衛が休む場所がない。
離れが無いと、客人が休める場所がない。
倉庫が無いと、物の出入りを頻繁に行わないといけない。
必要だからしょうがないんだけどな。
でも、「うーん」ってなってしまう。
過保護?
うん、その通りだね。