23-23 航空機⑤
大火災というとんでもない問題を引き起こしたエンジニアらだが、同じ失敗を繰り返さないよう対策をしていたようだ。
燃焼部分の保護を確実に行ない、清掃もして、気球はそのあとの確認が確実に行えるような構造にした。
そうしてできた飛行船2号機は無事に空へと旅立ち、推進器が弱すぎて思った方向になかなか進めないという弱点を露呈して、初飛行が終わった。
「分かってはいたが、推力が弱すぎるのと、翼の意味があんまり無いって所だな。
浮力は十分あったんだから、気球部分を小さくするのが無難じゃないか?」
「いや、輸送量を増やせると思った方がいいだろう。推力強化と尾翼の大型化をするべきだ。その方が改造コストが小さくなるのではないかな」
「推力強化はエンジンの強化だろう? そちらの方が大変そうな気もするんですけどー」
出てきた問題点への対処は、目的が定まらない中ではどうにもならないことが多い。
目的に応じた対処法を選ばないといけない訳だが、そもそも飛行船や飛行機を開発することそのものが目的である。
物があればそれに応じた運用を考えはするが、基礎研究に大きな期待をしていないのだ。
その為、エンジニア達は自己主張をして揉める。
仕方がないので、出資者として、俺が判断をする事にした。
「全員、自分が考える改良プランを企画書に書いて提出するように。その中で、一番良さそうだと思ったものを採用する。
工期と予算は考えなくていい。期限は1週間、複数人での合同提出を認める。以上、何か質問はあるか?」
「ありません!」
「よし、なら飛行船の話はこれでいいな?
飛行機の方も忘れず研究と作業を進めるように。では、解散!」
「「「はい!」」」
問題が出ることは織り込み済みだが、一つ一つ潰していけば、それでいい。
企業が利益を出す為にやっている研究とは違うし、資材も人員も俺の持ち出しだけで済んでいるから、ある意味青天井の予算を突っ込んでいるようなものだ。好き勝手できる。
それによって得られる技術の広がりがこの世界にどんな影響を与えるか、そこまで考える必要も無いし。
いや、まったく影響を考えない訳でもないか。
飛行船を作って運用するところまで考えると、移動する先が必要になるから。電話と同じく、自分だけが持っていても意味がないんだ。
そう思うと、影響を無視することはできないな。
移動先の友人が、自分たちも飛行船を運用したいと思うのは必然だろう。
そして俺にそれを断る理由も無い。
技術を独占したいとか、そんな事は考えていないし、する意味も見出せない。
むしろ広まった方が、俺にとっては好都合だ。
「なら、巻き込んだ方が面白いよな」
飛行機関連の技術が廃れた理由は簡単だ。
ジェットエンジンの飛行機などは、外国から輸入する資源がないと維持できない。
維持できない技術に固執するより、維持しないと拙い技術を残していけば、廃れていくのは必然だ。
自分たちだけで使えない技術・知識にいつまでもしがみつけるほど、人は強くない。
だが、今の世界と今の状況で、新しく技術を再編するのであれば、話は違う。
廃れていようと、どこかに残っているかもしれない知識があるかもしれず、それが再利用できるとしたら。
「……美濃の国をハブにするのは、止めておくか」
研究は、一気に進むかもしれない。