23-22 航空機④
パチパチと、木が燃えて爆ぜる音がする。
燃えているのは飛行船だ。
飛行船の枠組みに使われている木が燃えているのだ。
「ぎびゃぁぁぁぁ!?」
「ええい、うるさい!!」
エンジニアの悲鳴も聞こえるが、それはただの雑音だ。どうでもいいと言うか、邪魔でしかない。
「『フリーズ・ブリーズ』。ちっ、消火用に効果範囲の広い魔法を作っておくべきだったか」
俺は氷系の魔法を使って延焼を食い止めるが、焼け石に水、火山に水差しといった有り様だ。
何人も動員しているので僅かばかりの消火でも無駄ではないが、もう少し効率の良い魔法を使えるようにしておけば、と後悔してしまう。
不幸中の幸いと言うか、低レベル魔法である『フリーズ・ブリーズ』は大量にストックがある。
俺はカード枠限界までこの魔法を使い、消火に猫の手ばかりの貢献するのだった。
「気球内に、木屑が溜まっていた可能性がある、と。気球内部が熱せられ、空気が対流し、木屑に火が付き、気球を燃やしたと。
何で気が付けなかった?」
「そこまで意識がいっていませんでした……」
飛行船が完成したので、処女飛行に出ることになった。
そこから問題点の洗い出しをするはずだったのだが、飛行船は浮き上がる前に炎上し、気球部分が燃え尽きた。
幸いにもカード化はしてあったので、リキャストタイム終了後にまた設置し直すことはできるけど、この件に関しては関係者を罰しないといけないほどの大惨事である。
なあなあで済まされるほど、被害は小さくない。
エンジニア達は組み付け強度とか、エンジン周りとか、作業漏れが無いことなどは確認していたけど、清掃関係までは頭から抜け落ちていたようで、飛行船の気球部分に木屑が溜まっていることを見逃した。
そして、大火災である。
大いに反省して貰わないといけない。
タイミング悪く、今は冬場直前で空気が乾燥している。
下手をすれば防音用の木々にも燃え移り、山一つ巻き込むような火事になるところだったのだ。
そうは成らなかったが、冗談では済まない。
俺自身は飛行船にはほぼ関わっておらず、特に監督などもしていない。出資者という立場である。
そんな俺としては問題を起こしたエンジニア達に何か言わねばならず、こうやってお説教と相成った訳だ。
人的被害が出ていたら、お説教程度では済ませなかったがね。
「反省文と、同様の災害が起きないようにする対策案の提出。対策案は親の原因が見付かるよう、原因の更にその原因まで考察した上で考えること。いいね?」
「……ふぁい」
エンジニアが、俺に気圧され情けない声を上げた。
火災を起こしたことを考えれば、超がいくつか付くほどの温情処置だというのに、彼らはそれでもまだ手心を加えて欲しいという顔をしている。
追加の罰が必要かな?
あんまり甘い顔をしない方が良さそうだ。
ゴブニュート村は、法治国家ではなく、人治国家である。
要は、俺の胸先三寸で罰がいかようにも変えられる。
火災を起こしたエンジニアらは、衆人環視の中でのお尻百叩きの刑が追加された。
二度と、こういう事が無いようにお願いしたいものだね。
心臓に悪いよ。