23-16 出雲の国、伝言ゲーム
北海道が混乱したところで、俺に与える影響は、今のところ軽微だ。
国は強大な力を持つ俺の管理をするべきだと言い出す人間が出るかもしれない、その程度である。
俺の場合、既にいくつかの組織を関係を結んでいるので、そこまで気にするほどの話にはならない。
こういった時に問題児とみなされるのは、国や組織に紐づけされていない風来坊だけ。
三河や尾張、中陸奥と縁の深い俺は大丈夫のはずだ。
美濃の国?
まぁ、国とは深く付き合いを持っていないと思うよ。
美濃の国の一部地域や、そこで要職に就いている数名と付き合いがあるというだけだね。
北に意識を向けていたら、今度は西から手紙が届いた。
「出雲の国から、また手紙と荷物が届いたらしいよ。署長さんに中身を確認してもらったけど、また謝罪の手紙とお詫びの品だって。
あっちに行く用事は、もう無いんだけどね」
「はぁ。彼らはいったい何をしたいのでしょう?」
「名前を貸して欲しいみたいだね。俺がもう謝罪を受け入れた、関係の改善は終わっている、って周囲に喧伝したいみたい」
「創様は彼らを許すのですか?」
「うん。もういいかな、って」
手紙は、前回と同じ謝罪と賠償だ。
前回はまだ許さない、無視するといった態度を取るようにお願いしたが、今度は許す方向で話を進めることにした。
一言で言えば、相手をするのが面倒くさくなった。
完全に許しているわけではないが、これ以上相手から何かを差し出させるのは気分が悪く、こちらに手出ししない事を条件に、二度と関わらないようにとお願いする。
まぁ、許すと言うより絶縁状を叩きつけたようなもので、謝ってほしくない、そちらの誠意ある謝罪であっても関わりたくないのでもう謝らなくていい。
一応だが謝罪は受け入れたし、積極的に敵対はしないと約束する。そんな態度だ。
周囲に謝罪を受け入れてもらえたと説明しても良いよと、その許可も出すよ。
後の事は知らない。どうでもいい。
「旦那様、それは絶対に許さないと言っているのと同じでは?」
「対外的には、許した事になるよ。言われた側の気分的には、その通りだろうけどね」
なお、俺の対応に、夏鈴はなんとも言い難いような顔をしていた。
夏鈴も俺たちを奴隷にしようとしたあの二人組とそれを止めない一般兵らに嫌な感情を抱いていたのだが、俺ほど怒ってはいないんだよね。
馬鹿二人は矢で打ち抜いてやったし、その時の話を周囲に広めていったから、それでもうお相子と、終わったこと扱いしているからな。
俺ほど引きずっていないんだ。
「噂を広めている皆には、もう広めなくていいって伝えておかないとな」
「あれから半年以上経っていますから……どこまで広まったんでしょう?」
「全国レベルとは言わないけど、西日本にはずいぶん広まっただろうね。悪口は、特に広まりやすいし」
西日本にいる、隠れ里設置用のメンバー全員に噂を流すようにお願いしたんだよな。うん、かなり広められたはずだ。
悪事千里を駆けると言うが、出雲の国の不祥事は、たぶん西日本で知らない人はいないというぐらい広まっている可能性がある。
伝言ゲームみたいなものだから、もしかしたら途中で変な風に話がゆがんで、とんでもない噂も飛び交っていたりして。
間違った情報が伝わっていても、俺が流した話ではないからなぁ。そっちは知らないよ、と、無責任に言っておこう。