2-15 大垣入り
大垣市にまたやって来た。
大体一ヶ月ぶりである。
今回も、大垣市に入るときは夏鈴たちはステイ。俺一人で街中へと入る。
夏鈴たちという手札を隠し、相手を混乱させるためだね。
三度目になる肉の買取を精肉店で行い、4000円を得る。
「あらあら。久しぶりねぇ。あのちっちゃい子たちは、今回はいないのかしら?」
「ご無沙汰しています。今回も猪の肉ですが、買取をお願いします」
精肉店のお姉さんは二回しか顔を見せていない俺の事を覚えていたようで、俺が猪の肉を持ち込むと、嬉しそうに笑った。と言うか、一回しか顔を出していない夏鈴たちまで覚えているか。凄いな。
大垣市で嫌な事があったが、それだけではない。
こうやって良い縁もあった事だし、貴金属買取店の強欲店主のような連中がいたとしても、大垣市そのものを悪く感じるのは短絡的だろう。ちょっとだけ気持ちがほっこりする。
ただ、あの店を紹介したのはこのお姉さんなわけで、俺はちょっとだけ忠告をしておくことにした。
「そう言えば、この間紹介してもらったお店なんですが。あそこは駄目ですね。かなりタチが悪いので、行かないように勧めた方が良いです」
「そうなの? ごめんね。アタシはああいった店と縁が無いから、お店の人の人柄までは知らなくて」
「いえいえ。紹介してもらっておいて、文句を言うようですみません。ただ、あの店は暴力団やヤクザといった反社会的な勢力とつながりがありそうで、関わるのは得策ではないですから、知らないままの方が良いかもしれませんね」
「あらー。怖いわねぇ」
俺を拉致して荷物を奪おうとしたことなども伝え、ヤバい店だという認識を持ってもらう。
これ以上被害者が出るのはよろしくないので、あの店だけは人に勧めない方が良いのだ。
もしかしたら外から強制されているかもしれないけど、そこまでは知らない。
岐阜市の警察と貴金属買取店のお姉さん、どうしているかな?
何か状況に進展があったら……うん、関係ない人に盗みを働く事になりそうだから、調べておかないとダメだね。
俺は仕返しをする前に、あの店の店主がまだあの強欲店主かどうか、調べるところから始めることにした。
あの強欲店主であれば俺的には何の問題も無いけど、警察とかが動いて他の人が店長になっていたらただの八つ当たりだからやっちゃいけないだろう。
仕返しは、あくまで本人に対してだけ。不用意に周囲を巻き込むのはアウトだ。
我ながら面倒な事をしているよなぁ。
一ヶ月経って怒りも収まっているし、費用対効果というか俺の人生における利益面で、大きなマイナスが発生しちゃっているよ。
このマイナス分は、きっちり取り立てておかないといけないね。
砂金の代金に加え、俺がかけた手間と時間。
盗む物の額に関しては、そこを基準に考えよう。