23-13 北海道戦線
甲鉄艦・大和を見送り、1ヶ月が経った。
俺は送り出した人員と船を送還し、報告を受け取るべく、再召喚を行った。
中忍、魔剣部隊、魔術部隊、下忍衆。
俺はまず、リーダーであった中忍から話を聞くことにする。
「レポートをまとめる時間は必要かな?」
「いえ。先に口頭での報告を行いたいと思います」
中忍の五代からの報告を、夏鈴とともに聞いてみる。
五代の語る北海道の話は、思わず頭が痛くなるような内容だった。
まず、北海道の状況は、他の国と比較してかなり良くない。
寒さが厳しい雪国であり、ただ普通に生きるだけでも難しいのが北海道という国だ。
日本海側沿岸部の都市は雪の被害が大きいが、北海道が一番大変なのは、間違いない。
それに加え、こちらでは寒さに強いモンスターが出るという、最悪な状況になっている。
雪や吹雪に適応したモンスターが現れるため、冬場の厳しさは他のどの地域よりも恐ろしい。
俺だって、吹雪の雪原で氷結系の魔法を使うようなモンスターとは戦いたくない。どう考えても、相手に有利な地形と気候だ。何が悲しくてそんな苦行を強いられないといけないのか?
基本的に、本州にはまだ住みやすい土地がたくさんある。
人口は今の10倍は厳しいだろうが、5倍ぐらいなら余裕で受け入れられる下地がある。
なのにそれをしないというのは、郷土愛の賜物だ。
俺には理解しがたいが、自分の命より土地に固執する人というのは意外に多い。
実際は、引っ越した先で本当に生きていけるのか、不安だからだと思う。
しかし差し迫った命の危機があって尚動かないというのは共感できない。推測だけど、今はまだ生きているのだから、明日もなんとかなると、楽観的に考えているんじゃないかな?
確かに、まだ国の形を維持できていたんだから。
そんな北海道も、とうとう国の形を維持できなくなった。
悲しいことに、モンスターと関係なく、人間の手で。
ギフト持ちと言われる、やたら高い戦闘能力を持った馬鹿なのが旗頭となり、革命を起こしたのだ。
建前は北海道の政治家が腐っているとか、間違ったシステムだからだとか。
国の在り方が気に食わないから、自分が暴力で支配すると言い出したわけだ。どこから見てもクソガキ様である。
俺もすでに周囲からギフト持ちと思われているため、何も知らないのから危険人物扱いされている。
直接戦いこそしなかったが、岐阜市と戦争したわけだし、北海道のクソガキ様と同類と見られる要素はある。
基本的に俺は、妙なちょっかいをかけられたり、戦地に行ってこいとかそういった命令をされない立場を維持できれば、こちらから波風たてるような真似はしない。
やられたらやり返すが、そこまでなんだけどね。
けど、付き合いの無い連中には、それが分からない。
俺は危なそうである、それだけなんだ。
今はまだ北海道の話が広まっていないので、俺を危険視する奴は少数である。
それがいつまで大丈夫かは、分からない。