23-11 魔法開発と調練
俺はカードによる戦力強化をしているけど、別枠で戦力強化をしている仲間もいる。
「創様! 新しい封印術式の構築に成功! 対象を、地面に封印する、変更に成功!!」
シーラー、封印術士の錬。
彼女はこちらに走りながら、大きな声で成果を喧伝する。
村には部外者の立ち寄りを許可しているので、大声で成果を喋らないで欲しい。
そういった機密保護とか、一般的な常識に欠けるところがあるのは、どうにかして欲しいんだけど……研究者的と言えばいいのか、錬はそういったところに無頓着だ。なかなか成長しない。
研究成果に対するご褒美はあげるけど、それとは別に、あとでお仕置きコースである。
「うんうん。よく頑張った。ご褒美をあげるよ。
――でも、それを大声で周りにバラしたから、お仕置きもするからね」
「ハゥッ!?」
錬にその事を伝えると、分りやすく青ざめた。
完全に、その可能性を忘れていたらしい。言われてようやく思い出したという顔をしている。
細かい部分は凛音に報告を受け取って貰いつつ、俺は別のところに移動する。
「まだ引きつけろ! 今だ、撃てぇーーっ!!」
別のところでは、夏鈴が仲間に調練をしていた。
オーク2軍に加え、ゴブニュート軍など、新規の軍が増えたので、彼女はそれを効果的に扱う練習として、軍同士の戦闘経験を積ませていた。
両軍の兵力が均等だと夏鈴の側が有利なので、3対2と、夏鈴がいる方を少なくしての本格的な戦闘である。
この戦闘では怪我人が出るのは当たり前で、毎回ちょっとじゃない死人も出ている。死ななくても大怪我をする。
魔法禁止というルールもないので、本当にガチの戦闘なのだ。
こいつらは死んでも生き返るのだからと、エインヘリアルのごとく戦って、飯を食って、酒を飲む。ここはヴァルハラか。夏鈴一人しかヴァルキリーがいないけどな、本当にヴァルハラっぽい。
基本的に、カードモンスターは死んでも再召喚すれば生き返る。
それが戦隊・軍レベルになると、再召喚しなくても蘇生させられる。
「なんでだよ!?」と思わなくもないが、こいつらは「戦隊」「軍」という一個の生き物のような扱いらしく、全滅するまで再召喚が必要なほどには死なないのだ。
ゲーム的な思考になるけど、軍隊ユニット相手に回復を飛ばせばHPが全快するようなもので、一部が死んでもユニットが生き残ってさえいれば回復可能という事だろうな。
我が能力ながら、実にとんでもない能力である。
そう言えば、越前で戦った後の宴会で、思ったよりも死者が少なかったように感じたけど、その時には復活をしていたんだろうな……。
夏鈴からは「カードの効果のようですし、知っていると思っていました」と言われてしまったけど。実際は、気が付かなかっただけである。
生き返るとはいえ、死者が出ると、その分だけカードの成長が遅れるというデメリットがある。
生き返りにカードに貯まった魔力を消費するのだろう。
だったら死なない程度にやらせた方が効率が良さそうな気もするけど、そんな手抜きの経験よりも、本気の戦いをさせた方がカードは効率よく成長する。
低レベルモンスターでは経験値が稼げないようなものだ。本気の戦いを経験する方が大事なのだ。
そんなわけで、死ぬことを気にせず彼らは戦い続ける。
何か起きる、その時の為に。