22-25 外との関係⑤
「そういえば、大垣の署長さんが、「最近、創さんの味方面をして近寄ってくるのが多くて困る」ってボヤいていましたよ」
「いつもの事では?」
「そうなんですけどね。でも、岐阜市が創さんと距離を取り始めたじゃないですか。それを知って、今が好機と見たみたいなんですよね」
俺と大垣市の関係は、ちょっと面倒くさい。
署長さん個人はある程度信用しているが、大垣市という単位で見ると、そこまで信用できていない。
一応、ニノマエとは別の名前で店舗を持っていたりするんだけどね。
店を通じて地元と触れ合う、という所まで踏み込んでいない。
あちらの店はむしろ、俺が大垣市と直接関わらないようにするためのお店だし。
そんな大垣市は、岐阜市とそこまで仲が良くない。
同じ美濃の国の所属で味方なんだけど、ライバル意識というか、味方だからこそ仲が悪い部分がある。
立地や規模が近く、ライバルとして意識しているだけなので、致命的というほどでもないんだけどね。
そんな大垣市にしてみれば、岐阜市が敵対視しつつある俺は敵の敵で、味方に取り込みたい同胞と思われた。
今はやや味方より程度の立ち位置なので、これを機に完全に味方として取り込みたいのだろう。
味方が増える事は構わないのだが、「味方なんだから」とこちらの事情を考慮せずに使い倒そうという馬鹿も出てくるので、そこは注意しないといけない。
こちらを格下扱いしていいように使える駒と思う奴は、だいたい「自分は優れている人間だから他の人間を導いてあげている」と悪気無しで言いかねない大馬鹿野郎である。付き合いは厳選すべきだ。
下手に立場だけは立派なので、自分が馬鹿と気が付く機会を失いやすいんだよね。パワハラやモラハラをする上司のような存在だ。
普段大垣に近寄らない俺に替わり、矢面に立たねばならない署長さんには、あとで差し入れでも持っていこう。
そういうことを考えると、神戸町はどうなんだ、という話になる。
低い立場の人間に尊敬されるだけの、小学生の集団に高校生が混じったような状態なんじゃないか、大人に混じると自分が劣っているように感じるのを見ないために自分を誤魔化しているんじゃないかと言われそうだ。
どちらかと言えば、逆だな。
実際の関係は大人な神戸町の人たちに、子供な俺が甘えて癒される、そんな関係である。
あちらは人柄が良い人が多く、まだ未熟な俺をフォローしてくれるので、付き合いをもって気分が良いのだ。
田舎特有の、身内の若年への甘さだ。
都会だと、同じ所に住んでいても関係が希薄になるからね。
田舎だと、それが許されない、ご近所同士で助け合わないとやっていけない部分があるので、付き合いが深くなる。
その分、排他的になったり、距離の近さが苦手な人は都会の希薄さがちょうどいいとか言ったりするわけだけど。
今のところ、俺はあちらの空気が心地よいと感じているよ。