22-23 外との関係②
「美濃の国? 動けないわ。気にしなくても問題ありません。
それよりも、美濃の国の内部にもう一つぐらい、隠れ里を作りましょう。いざという時の、集合場所です。
村の人達は創さんがまとめて持ち運べるので必要ないかもしれませんが、今後、、カードから解放されたお仲間を増やした時に困らない体制を整えるべきですよ」
桜井さんと一緒にこちらの仲間になった、浅野さん。
彼女は、他の国に作っている隠れ里の状況をまとめて貰っていた。
そこで要望などを確認して貰い、情報をまとめた上でこちらに回してくる。
そして浅野さんは、ついでに自分の考えも付け加える。
理由もちゃんと教えてくれるので、「成る程」と思わされる事が多い。
「緊急避難先か。確かに必要だよね。どこかの山に穴でも掘って、そこに物資を貯め込んでおくか」
「それがいいですね、と、言いたいですが、物資の管理に人を使う以上、里にしてしまう方がいいと思いますよ。
知らないうちに誰かが入り込み、物資を持ち去られていた。そうなっては意味がありません。そして確認の為に頻繁に人が出入りするようでは、すぐに露見するかもしれません。
リスクを考えるなら、隠れ里にしてしまうのが良いでしょう」
ただ、地下倉庫自体はあっても良いので、隠れ里に地下倉庫を作るのはやった方がいいらしい。
美濃の国にゴブニュート村が知られている以上、保険は大事だ。
ただ、これを浅野さんが言い出した、というのは。
「やっぱり、俺を危険視して支配下に置こうという馬鹿がまた出てきたんだ」
「ええ。古巣の愚かな話ですが、国主が多忙により機能せず、抑えが緩くなっています」
岐阜市の議会が、国主の制御を外れそうという事だ。
岐阜市と揉めたのは、おおよそ1年前だ。
それだけ時間があれば、利益に目が眩んで俺たちに手を出そうとする馬鹿が出てきてもしょうがない。
さすがに、直接相対していればこんな事にならないのだが、前回は戦う前に兵を退かせたので、話を聞いただけの議員程度では危機感が足りなかったらしい。
兵士達の方は、俺を武力で従わせる難易度を把握しているだろうけどね。
「いいえ。創さんはそこそこ法を守る方なので、ルールで縛るつもりのようですよ?」
「また、無駄な事を」
俺はルールに対し、無条件で従うような人間ではない。
こちらの利益と公益を秤にかけ、自分の中にある絶対条件を侵されない程度にルールを守っている。
変な法律を作るようであれば、戦争も辞さない構えでいる。
「とりあえず、火薬草の栽培をしたいという要請が――」
「戦略物資を輸出する馬鹿はいないと、そう伝えておいてくれ」
美濃の国は、最も近い味方で、敵である。
付き合える部分と付き合えない部分をきっちり区別し、右手で握手しても左手で殴り合うような、そんな関係を続けていくだろう。
だからこそ、油断し隙を見せる事の無いようにしなくてはね。