22-22 外との関係①
息抜きに大豆の品種改良をしたけど、それで何か新しい着想を得る事は無かった。
そんなに簡単に、いいアイディアなどが手に入るわけも無い。
ただ、気分転換としては都合が良かったから、そこは助かったと思うよ。
思ったような成果も無く、ただ実験を繰り返すだけの日々は、心を削るからね。
着実に失敗を積み重ねる事も成果だとは理解しているんだけど、目に見えて出る結果もたまには欲しいんだよ。
新しいもの、新しいカードを増やすのは楽しいよ?
でも、俺は思い付き、フィーリングで何かをするタイプで、本格的な研究をするのに向いていないんだろうね。
何年も普通に研究をしている人達は、本当に尊敬できるよ。
俺とは知識欲や我慢強さが違う。
その分、常識が足りない人も多いと聞くけどね。
俺がそうやって研究を続ける間に、出雲の国から謝罪の品が届いたらしい。
物が金銭と酒だったらしいので俺はあまり興味を持てず、金はニノマエに、酒は身内に振る舞って終わった。
その時は研究で煮詰まっていたから酒を飲む気にはなれず、かつ銘柄が現地で購入してカード化したお酒だったので、確認する必要性も感じなかった。
謝罪の言葉については、本当にどうでもいいので、手紙を読んでもいない。
ただ、あの国には行く事はあるだろうけど、もう関わらないだろうなと、そんなふうに思ったよ。
俺は外交官でもなんでもないので、立場を振りかざして何かする必要も無いし。
仲良くするとか、何かするのも要らないよな。
あっちに作る隠れ里は、間違いなく現地と接触を断つタイプにするよ。
逆に、現地と仲良くして上手くいっているのが仙台市のある中陸奥の国。
こちらは黒岩の里という、仙台市公認の里を作り、人を常駐させている。
俺からの支援は最初に行なった建造物の配置と、鍛冶技術の提供と、ニノマエによる物販。
仙台市からは黒岩の里に人を送り込み、そこで里の住人が不便の無いように色々と運営してくれている。
持ちつ持たれつの関係がしっかりしているので、ここまでは特に大きなトラブルも無く、俺の中では高評価だ。
その恩恵として、こちらは仙台市の生産品をある程度優遇した状態で取り引きさせて貰っている。
仙台市は俺の仲間の持つ鍛冶技術と、その生産設備の技術解析により、仙台市の製鉄業の強化を行なう。
今のところ、どちらにも損は無い。
懸念材料としては、こちらが提供できる技術を全て教え終わった後の事だ。
それに関しては「技術の継承が終わったと思った段階で、ニノマエの優遇措置を取り消す」という取り決めになっている。
ただ、「技術の継承が終わった」と言う部分が曖昧なので、そこで揉める可能性がある。
設備の方は、こちらの指導無しで作れるようになったらいいだけなので、これは分りやすい。
しかし鍛冶師の腕については個人差があるので、本当に終わったかどうかの確認が出来ない。
あと、俺の寿命の問題もあるからね。
俺が生きているうちに全部終わればいいんだけど、そうならなかったら、また揉め事が起きそうな予感はある。
上手く、円満に話がまとまればいいんだけど。
ま、100年先の話は、百年後の誰かに解決して貰うしかないんだけどね。
俺たちはそれを信じて今を生きるだけだ。