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22-21 外部委託

 単純に育てやすく、生育が早く、収穫量が期待できる品種。日当たりと水はけのいい場所なら、痩せた土壌に灰を撒いてアルカリ側に調整すれば簡単に育つよ。肥料は不要というか逆効果だから注意が必要。連作にも対応しているから、他の作物と一緒に育てなくても何とでもなる。

 特に最後の、連作に対応しているという特性は通常の大豆には無い強みである。

 ただし、味や栄養価については特筆すべき事は無く、本当に家畜の餌か、飢饉などが起きそうな時に急いで育てる救荒作物として新種の大豆を渡した。


 俺はこれを『百日大豆』と名付けた。



「繁殖力が強いので、逆にそれが問題かもしれませんけどね」

「ええと……」

「竹とか、ミントのような物だと思って貰えると分りやすいですか」

「ああ、そういう事ですね」

「あと、非常に生命力が強く、根が残っていれば、そこから再生します」


 竹やミントは植物兵器と言われる事もある。

 その繁殖力の強さから下手な管理下では爆発的に増えて、周囲を埋め尽くすのだ。

 最低でも地面に深さ50cmぐらいまでは板を打ち込み、繁殖を抑制する必要がある。


 この大豆も、そういった危険性がある物だと説明して渡した。



 ――数ヶ月後、夏に植えたはずの大豆の苗が冬になっても枯れず収穫時期が掴めない、プランターから地面に侵食された、畑の引っこ抜いたはずの場所から再生したなど、そういった相談が寄せられる事になる。

 ちゃんと最初に説明しておいたし、情報をまとめた冊子も渡しているので、まずはそれに目を通すように言っておいたよ。

 無くした? 二度目は無いよ。手探りで頑張れ。


 そうしたら、いつの間にか名前が『侵食の大豆』に変わった。

 周囲からそう呼ばれるようになっていたのだ。解せぬ。





 試験的に育てるのに適した場所を確保しようとしたらそういった場所にはすでにソバが植えられており、土地の確保に苦労したものの、何とか栽培を始めるところまでこぎ着けた。

 美濃の国は元々農耕に適した土地が多く、逆にソバや大豆に適した土地が少ない。

 無いとは言わないし、育てる事も可能だけど、他所の方が都合が良かったりするのは事実だ。


 そうなると、ソバに適した長野県方面、信州の国にでも広めた方がやり易いのか?

 せっかく作ったのだし、ニノマエ経由で話をしてみるかね。


「いやいや。そういったときこそ、国を使ってやれば良い。信頼がある事もそうだが、何かあった時の対応が楽になる。

 個人間でこういった事をすると、揉め事が起きた時、手に負えなくなるからな」


 最初はいつものようにニノマエにやらせようとしたら、元岐阜市の将軍だった桜井さんが口出しをしてきた。

 話を聞いてみると、国にこういった仕事を任せる事で恩を売って、尚且つ責任逃れをしてしまえと言う。


「任せられる奴に仕事を任せてやれ。他にやるべき事が多い時は、特にそうすべきだ」


 息抜きのつもりで始めた事なら、息抜きで収まるように動けと、桜井さんは言う。



 そうして俺は『百日大豆』を美濃の国に委託した。

 あとは国と国で話し合って貰える事になる。


 国主の斉藤が、その後の問題も含めて大量の仕事に追われる事になったが、それは俺のあずかり知らぬ話である。

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