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22-20 片手間仕事

 息抜きを終えた俺だが、研究は一回足を止め、他のことに手を出すことにした。

 その理由は、研究が思うように進んでくれないことが一つ。

 もう一つの理由は、ちょっと急ぎの案件を依頼されたからだ。


 予定に無い、急ぎの頼み事など断ってしまっても構わないのだが、個人的に気が向いたこともあり、行き詰まった閉塞感から解放される為にも、軽い気持ちで引き受ける事にした。





 俺が頼まれた仕事は、食料増産に関する話だ。

 穀物類ではなく豆類で、何か良い物は無いかと聞かれたのだ。


 ちょっと前に新種の灰で育つジャガイモを大垣市に渡したのだが、そこから他にも何か無いかと興味を持たれた。

 で、ソバ、鶏、ジャガイモと続いているので、今度は豆が欲しいと言われた。


 それを言ったのは、大垣の議会に所属する議員の一人だ。

 署長さんとの会食で顔を合せただけの、そこまで親しくない人である。


 相手にしても、本気で何か用意してもらえるなどとは考えていない。

 親密さが足りていないし、ジャガイモを貰ったばかりでこちらに何も返しておらず、常識的に見て厚かましいお願いだからである。



 その時は酒が入っていたので、場を盛り上げる為の、断られることが前提のお願いであった。

 もしもこちらが了承したとしても、所詮は酒の席の話であり、誓約書の類を交わしたものですら無く、あとで覚えていないと言われようとただの冗談でしたよと言って笑って済ませるような話だった。

 その場で俺は了承して、それを肴に場が盛り上がったのだが、だからといって俺以外は誰も本気にしていなかった。


 なので、俺がその件でちゃんとした書類を用意してきたので、本当に本気で用意するのかと、何度も確認された。

 断っても構わない、冗談だったのだと言われても、やってみようという気分になったので、そのまま「やります」と押し通した。





 これはある意味、嫌がらせに近い。

 こうやって酒の席のちょっとした冗談を本気でとられると、相手も萎縮してしまう。迂闊な発言が出来なくなるのだ。

 酒の席でそれはあまりよろしいことではなく、空気を読まない行為である。


 もしかしたら、そういった席に次からは呼ばれなくなるかもしれない。

 俺の狙いはそこにある。

 面倒な人付き合いを避ける為、軽めの牽制で仕事をするのだ。

 少なくとも、損をする人は少ないので、気兼ねなく出来る。



 使用目的は卵目的の鶏の餌をかさ増しすることなので、味はそこまで気にしなくてもいいか。

 繁殖力、対病、収穫量だけ強化すれば要求された物に仕上がるだろう。

 これまでも似たような作物は作ってきたし、それらと比べれば片手間程度の物にしかしないので、軽めのお仕事だ。


 莉奈にも協力を仰ぎ、もう一手間加えるか?

 いや、あまりやり過ぎるのも良くないか。+3強化までで止めておこう。

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