22-18 燻る不満
時間のかかる農作物だけではなく、別方面の利用も行った。
これは大垣でもやっている事だが、真っ白な灰であれば、集めて糊で固め、チョークモドキにする。
黒板さえあれば、白のチョークとして使えるよ。
その他の色に関しては、糊に混ぜる染料さえあれば作れるけど、今のところ需要は無い。
そもそも、チョークだってそんなに使わないので、チョークそのものの需要が小さい。
そしてこれは俺のカード能力が前提になってしまうが、灰に圧力と熱を加え、結晶化させることも試してみた。
灰を固めた所で宝石のようにはならないのだが、それでも岩か何かのようにはなる。
灰の石だから「石灰」という事にはならないが、それなりに似たものに仕上がった。
ただし強度が低く、これ以上の性質変化を求めるためにカードの強化と合成を使ってみたところ、『灰晶石』という、新アイテムが出来上がった。
この灰の岩は、宝石の原石相当らしい。初めてスペルカードを合成できたのだ。
『灰(+3)』 → 『灰の岩(+3)』 + 『マナ・ボルト』 → 『灰晶石』
『灰晶石』:アイテム:☆☆☆:小:10日
曖昧な魔力を秘めた水晶。持つ物の魔力を僅かに増幅する。
曖昧な魔力……。
ちょっとではなく、全く意味が分からない。
これが『魔晶石』であれば「純粋な魔力」で、『癒晶石』なら「治癒の魔力」となるのだが、「曖昧な魔力」ってなんだ?
一応、晶石系アイテムになりはしたが、ここでこのカードも進化や合成の材料にできなくなったので、このルートもここでストップ。
他の晶石系アイテムであれば『魔法使いの杖』と合成して『魔術師の杖』にできるんだけど、それもできない。
名前やテキストは他の晶石系アイテムと同じなんだけど、何かしら、系統が違うようでもある。
今は合成先が増えた事を喜ぼう。
この結果を使って、ちょっとした思い付きを試す。
魔晶石を灰で包んで、包んだ灰を灰の岩に作り替えて……ここでもう一度灰晶石にしようとしても、上手くいかない。
灰の岩で包む石を火晶石や癒晶石に切り替えても、晶石系アイテムを内包した灰の岩は灰晶石にできない。
おそらく形状が理由で、灰晶石にならない。スペルカードを変えても反応は無かった。
この方法で灰晶石の中に別の魔力が包まれている、という事は言えないようだな。残念である。
なお、これだけの結果を出すまでに、灰の研究を3カ月ほど続けている。
俺としてはまだまだだが、夏鈴は「別の研究をした方が良かったのでは?」と、そろそろ疑問に思い始め、ちょっとだけ目に見える利益・成果が欲しいなと思う次第である。
「研究は、時間がかかるし、途中で利益を得られない事も珍しくないんだよ?」
「そうなのでしょうが……少々、寄り道が過ぎているような気もします」
夏鈴をほったらかしにしているつもりは無いけど、夏鈴は研究を黙々としている俺の姿を見て、ちょっと不満を溜め込んでしまったようである。
夏鈴自身はよくある「仕事と私と、どっちが大事なの!?」というお花畑さんではないが、それでも放置されているような気分になるのか、悲しそうだ。
うーん。どうにかならないものかなぁ?