22-15 灰になって終わらず
失敗について考えよう。
単純に、マジックアイテムで回復系統と思ったから、魔力だとか呪術的なシンボルだとか、そういった方向で考えたのが間違いだったのかもしれない。
聖なる力を得たみたいに見えるが、望んでいた方向性とは違うアイテムなので、これはアウト。
その後の拡張性にも期待できないので、できた物はいったん横に置く。
死からの復活を暗示するのは、灰に入れた燃える炭が、その火を維持している所からだろう。
大事なのは火に関する部分かもしれない。
じゃあ、何を強化していくべきか?
断熱、保温からか?
やってみてから考えよう。
何度か試したが、思ったような効果にはならない。
死にそうになると命をつなぎ留めるようにするアイテムを目指したが、それも駄目だった。
火属性という事で、火晶石・癒晶石の粉末を加えてみたが、無駄に終わる。ただの回復アイテムが出来上がった。
持続回復効果でもあればまだ良かったが、そういった便利効果も無いようだ。
形状が粉末なので、これはこれで使い道があると思うけど……コストを考えると無駄の境地である。
晶石系アイテムは俺が関わらずとも作れるが、魔術部隊の負担を安易に増やす訳にもいかないからな。
スペルカードに灰を組み込めないかと回復系を一通り確認してみたけど、それも駄目。
失敗扱いの新規製作分も含め、組み合わせられるスペルカードが無い。
失敗したと思う聖灰と回復する灰を混ぜてもみたが、意味は無し。
一回カード化を解除して、混ぜてから再度カード化してみたけど、『混ざり物の灰』という、効果は失われていないけど使いにくくなっただけのアイテムが残った。
「あの錬金術系ゲームだと、中和剤、複数のアイテムの効果を繋ぐ物が必要になるんだけどな。
似たような何かを作らないと駄目なのかね?」
こういった研究は、年単位で時間がかかってもおかしくない。
素人どころか研究者だって、ほんの数日何かしただけで凄い発見をしているわけではないのだ。
地道に積み重ね、積み上げた先で凄い発見をするのだ。焦る必要は無い。
それに、副産物だって全く役に立たないわけではない。
聖灰の方は鍛冶師連中が使いたいと言って持っていった。良い武器を打つのに、身を清めるのは、彼らの中で必要なのだろう。聖別された水は無いが、それでもゲン担ぎにはちょうどいいと言っていた。
回復する灰の方は、莉奈が肥料にしたいと言っている。……大丈夫か?
弱くはあるけど、一応はマジックアイテムの一種だ。使い方次第ではモンスターを産み出しかねない。
いや、それを言い出すとキリがないな。莉奈は森のプロなんだから、信じておけばいいか。なんとかならないなら、その時に手を貸そう。
俺は俺で、次のアプローチを考えないといけない。
何度失敗が続こうが、最後に結果を出せばいい。
そのためには、失敗したからと足を止めず、継続するしかないんだ。
……いや、高々二度三度の失敗で足を止めたら、それは情けなさすぎると思う。
打たれ弱いにも程があるだろうよ。