2-12 泥棒の準備
俺は道具の準備を岐阜で行う気にならなかったので、とりあえず欲しい物を適当に購入し、家に戻った。
俺の家は山県市の真ん中へんらしく、岐阜市からは長良川を渡り、長良・高富を越え、少し西に行った所にあった。
これまでの自分の行動と記憶の中の地図やらなんやらを参照して動いてみたけど、道に迷うことなく、何とかなった。
この辺りは山が多く、山を壁のように考えつつ動けば意外となんとかなる。
俺の住んでいたところは山の合間にある小さな平原なので、余計に分かりやすかった。
念のため、これまで歩いた範囲をなんとなくレベルでいいから、地図にした。
岐阜で『紙』と『鉛筆』を売っていたんだよね。自作は大変だから、かなり助かる。
紙や鉛筆はそこまで高くなかった。
今後は地図だけでなく、色々と書くことも増えるだろう。
まず、普通の『麻布の服』を用意する。
あぶく銭で購入した、岐阜で手に入れた服である。
で、もう一つ用意するのが『木炭』だ。
適当に木を切って、蒸し焼きにして作った――そして失敗したので進化させてごまかした――逸品である。
これを、粉にして服に塗り付けた。
俺の手が真っ黒になるが、これで服も真っ黒だ。
元の色は植物の繊維の色、白だったんだけどね。俺の手ごと真っ黒になった。
このままでもいいんだろうけど、これを「光を吸収する」ようにと、強化する。
それで進化すると。
『宵闇の黒服』:アイテム:☆☆☆:小:10日
真っ黒な、闇に溶け込む色合いの服。これを着た者は闇の中であれば見つかりにくくなり、光の下では大きく目立つ。
こんな風に、ちょっとしたマジックアイテム風味の効果を持った服となる。
使った『木炭』は消費されたようで、カードが消えていた。
レベル16で行う進化はレベル10で行う合成を内包しているというか、こういう事が起きたりするんだよね。夏鈴の『麻布の服』と『鉄のナイフ』みたいに。
毎回必ず起きることじゃないけど、なんとなく法則性が掴めてきたよ。
あとは同様のことを口元に巻く布と靴にも行い、宵闇セットは完成。
本当は手袋も欲しかったけど、手にフィットしないものを使うのは怖いから。物とか持った時に滑ると怖いから。今回は見送り。
目元と手だけはそのままである。
他にも、窓ガラスを割ることを考え、樹液を原料とした粘着剤、割るときに出る音を吸収するものや、足止め用の煙玉系統のアイテムと米から作った鳥もちなども用意する。
眠り玉とか、睡眠薬的なアイテムも作りたいんだけどね。今のところ、そういった効果のアイテムは作れないでいる。
睡眠薬の原料なんて知らないから、そこはしょうがないよ。
むしろ、睡眠薬の作り方なんて一般人が知っていたら怖いわ。
知らない方が普通である。