22-11 異世界式ゴミ問題②
基本的にも応用的にも、現代日本に魔法など無かった。
魔法に関する蓄積に関して言えば、こちらの世界で生きてきた時間だけ。
知らない事の方が多い。
知らない事でも、ラノベ知識で危険性を想像する事はできる。
マジックアイテムは扱いによっては怖い事になりかねないと思っていたし、その管理は一部を除き、しっかりやっていた。
ただ、一部の例外が面倒な事態を招いてしまった。
鍛冶師の工房で発生した熱を冷ますために用意した『千年氷河』という、絶対に溶けない氷でできたアイテムがある。
普段はあまり意識していないが、これもマジックアイテムである。
俺はこの氷を工房以外での利用方法として、冷蔵庫の冷却機構という使い方をしていた。
各家に冷蔵庫があると生活が便利になる。大規模な冷蔵倉庫があれば、食料保管に役立つ。
誰でも思いつく、簡単な使い方だ。
で、この冷蔵庫に関しては数が多く、一々細かいチェックなどしていなかった。
基本、その家の住人に任せている。
……その住人の基準は様々で、「これぐらい構わないだろう」とか「ちょっとの破損は自分で直そう」と考え、よろしくない状態の千年氷河が出来上がった。
その後の事も予想が簡単な話で、そこで夏の暑さにやられた小動物が氷をカリカリ削って食べて、変異したのである。
千年氷河、融けはしないが、削ることはできるからね。
産まれたモンスターは、氷の魔法を操るタイプだった。
『スノーラビット』、和訳すると雪ウサギになる小型モンスターだ。
暑いのが嫌で、「もっと氷を」とばかりに村で暴れた。
一時的に混乱をきたした為、退治するまでの間に冷蔵庫がいくつもお亡くなりになり、そこそこの被害を出している。
強くて厄介だったのではなく、初見で対応を熟慮しているうちに被害が出たのだ。
相手を分かってしまえば対応は簡単だし、討伐は問題なかった。
最初はアンカマーと思っていたので原因を調べるのに手間取ったが、得られた情報は有益だ。
意図せず発生したなら大問題だが、こちらが誘導して発生するならむしろ望むところ。現在はモンスター強化の手段の一つになる。
大事なことなのは、こちらの計画に合わせて発生させること。
野性動物が知らないところでモンスター化して、神戸町とかを襲ったりすることがないように、管理すること。
だから、ゴミの処理は大切。
あと、家財の管理も適切に。
今はまだ大丈夫だけど、誰かがゴミ屋敷を作ると、そこから変なモンスターが産まれるかもしれない。
この魔法のある世界は、それだけ危険に満ちている。