22-6 封印術の可能性③
微妙な結果に終わった凛音の能力獲得。
「なぁ。得た能力を、凛音の中で強化していくことはできるのか?」
「多分、無理? 自分だけで変えることはできないと思う。捕食封印で他の新しい能力をくっつけるとか、そういうのは、できるわ」
捕食封印で得た能力は、それ単体で完成しているというか、融通が利かない部分があるようだ。
だけど、捕食封印を繰り返すことで、より強い能力を作ることはできそう、と。
ただし新しい問題がある。
「できるけど、やりすぎはできない? なにかしら、上限がある? 強すぎる能力は、無理。作れない」
くっつけて能力を強化することはできるけど、能力を強くし過ぎるのは駄目らしい。やりすぎると、器を超えた能力に自分が殺される。
ゲーム的に言えば、メインのレベル以上にサブのレベル上げができないようなものか。
分かるような、分からない話だ。
それなら、逆に敵の能力を分割して捕食できれば格上相手でも使えそうなんだけどね。それができるなら、苦労はしない。
将来的にはできるようになるかもしれないけど、今の凛音には不可能だ。
あと、錬がいても、二人がかりでの捕食もできない。
あまりこちらに都合のいい話はなさそうだ。
細かい部分は能力を繰り返し使っていけば感覚的に分かるだろうし、今はできずとも技術的な習熟でできる事が増えるかもしれない。
新しい技術とはいつも不完全で、習熟を重ねていくことで知見を広め、より完成に近付けるしかない。
近道は無いのだ。
「じゃあ、凛音はこれから捕食封印の回数をこなして、色々調べたりするのか?」
「やらない」
「それよりも、別の封印術を作る。捕食封印は錬に任せる」
捕食封印という封印術式を得た凛音だけど、彼女は捕食封印に拘るつもりはない。
これからを考え、捕食封印を封印術の一つとして習得はしたが、彼女にとって大事なのは「封印術の基礎知識を得る」という部分だ。
一度失敗した、結果を出せていない捕食封印を理解し、その欠点を補い、次に繋げることを目指すのだという。
捕食封印は問題のあった技術であるが、ベース、叩き台とするのであれば問題ない。
ここから術式を発展させ、新たな魔法とするのが凛音の目標だ。
新しい魔法を作るのに、古い魔法が不要とは言わない。
俺自身、スペルカードの進化や合成をしているので、基本的な思想が似てくるのだろう。
どうやって新しい封印術式を作るのかは知らないが、凛音の中にはすでに構想があるようだ。
そうなると、俺は俺で何か考えてみたくはなる。
まずは捕食封印の術式をスペルカードで使えるようにすれば、そこからの応用・発展はたやすい、はず。
星の数次第では必要魔力が多くなりすぎて、強化も進化も合成もできなくなるからな。
挑む分には構わないだろう。
「旦那様。それもいいですが、ゴーレムや血石の研究も、中途半端な状態です。
何かしらの形にして、順番に結果を出していった方がいいのでは?」
……構うようだ。
分かっているんだ。手を広げて中途半端になってばかりだと。
できる事はいっぱいあるし、やりたい事もやらなければならない事も積み重なっている。手を広げ過ぎているんだ。
そうなると、俺の手は全く足りなくなる。
誰かに任せるしかないんだよな。
そして、誰かに任せるなら、中途半端な状態で引き継ぐのではなく、最初から任せてしまう方がいい。
引き継ぎの手間と時間が無駄だし、誰かの後っていうのは、前任者の癖に悩まされたりもするから。
封印術式は、錬と凛音に任せておけと。
夏鈴はそうやって俺を諫める。
この件に関しては、どう言い繕っても夏鈴が正しい。
俺は仕方が無いと今は諦め、ゴーレムの研究を進めることにするのだった。
当面の目標は、俺抜きでゴーレムを生産する事かな?
アイアンのボディであれば鍛冶師をメインに、動力その他は魔術師たちを動員するか。
ああ、魔術師たちからは増員をお願いされているし、そっち方面の仲間を用意しないとダメかな。