22-5 封印術の可能性②
捕食封印の、どこを変えられるのか?
実行する前に凛音に聞いてみた。
「食べ方? 煮る、焼く、そのまま。早く食べる、ゆっくり味わう、色々考えるために一度止まる?」
本人もよく分かっていないように見えるが、何となく理解できた。
食べる相手によって最適解を探しながら捕食封印をする事で、より安全確実、迅速に封印後の捕食を終わらせるのだろう。
そうとう実力差のある格下であれば、あっさりと終わらせることもできそうだな。
「じゃあ、昨日と同じタイラントボアを解放するよ」
「こっちの準備はできてるわ」
封印までの流れは、錬と同じだった。
魔法陣を描き、相手を捕らえ、光に換えて自分に取り込む。
ただ、一連の手順は錬よりも凛音の方が上のように見えた。
そこは強化最大の凛音と、未強化の錬との差だろうな。あとは召喚されている時の経験値分の差か。
一般的には汎用的な凛音よりも専門家の錬の方が上なんだろうけど、それ以上の積み重ねの差は大きい。
当然、凛音の胸にも痣が浮かんだのだが、それはビデオの早送りでもしたように、すぐに消えていった。
凛音とタイラントボアの間にはかなりの実力差があったという事だろう。
そして凛音がタイラントボアを“食べ終えた”事で、次の検証ができるようになった。
「凛音。タイラントボアを食べ終えたのなら、能力は使えるようになったのか?」
「勿論」
補食封印のメイン。
食べた相手の能力を奪う部分である。
モンスター転生系のラノベにおけるテンプレのような能力。
かなりの強スキルと思っていたけど……。
「未熟児たったからか? 食べた数が少ない? 使いこなせていないからか?
なんと言うか、微妙だな」
「これ以上は魔力が持たない。ギブアップ」
補食封印により手に入れた能力の使用には、魔力を消費するらしい。
タイラントボアは生体能力だから、鉄壁の防御を維持するのに消耗しないんだけど、凛音は能力を数分間だけ維持して終了。
本来はダメージを一定量、魔力に移し替えるような効果なんだけど。待機状態でこれでは、期待できないかな?
「未熟児だから、と思う。母親のお腹の中だから、母親のフォローで、体を能力に慣らしてると思うの」
凛音は魔力が枯渇寸前まで追い込まれ、かなり苦しそうだ。
そんな状態で、使ってみた感想を言う。
言われ、得た能力にそんなものかと納得する。
産まれたばかりならともかく、産まれる前だからなぁ。能力が不完全でもしょうがないか。
「なら、産まれたばかりの瓜坊になるまで成長させるか」
錬のことが優先だけど、そのぶんの魔力は……明後日ぐらいなら用意できそうだ。
予定に「タイラントボアの未熟児を瓜坊に成長させる」と書き加える。
それにしても、凛音よ。
今日の魔法教室は、魔力が枯渇した、そんな状態で大丈夫か?