2-11 泥棒の準備
さて。
大垣であの強欲店主にやられたことの仕返しをしようと思う。
岐阜の方に移住、大垣には行かないようにすればいいようにも思う。
けど、これは心の問題だ。何かされて逃げるだけでは、心に負け犬根性が染みついてしまう。強い奴らに怯えるだけの人生なんてまっぴらごめんだ。
負けてなるものかと抗う気持ちは大切だ。
俺は商売敵でも何でもないし、アレに被害が出たところで利益にはならない。
大切なのは、俺の利益の確保だ。あっちの被害ではない。
なので、泥棒でもしてやろうと思う。
この件でやらかしたと思うのは、岐阜の警察などで話を広めてしまった事。
岐阜の人たちには彼らなりの理由があってのこととはいえ、ちゃんと法と道徳に基づいて行動していた。
だったら俺は彼らの前ではちゃんと法を守り、少なくともこちらから手酷い裏切りをするような真似を避けたい。
法律は相互の契約だ。相手が守っているうちはこちらも守ろうという気になる。
誰かからの歩み寄りを無視することもしたくないんだ。
その方がきっと豊かである。
そんな理由で、新しいカードを用意しようと思う。
泥棒はする。
法律は守る。
矛盾しないようにする事は不可能じゃない。
元が法に触れたような品であれば、盗んだところで問題ないだろうという考えだ。
実際には、どんな理由があっても犯罪になるんだけどね。
ただ、こちらの気持ちの問題で、そんな方法を選ぶことにした。
最初は俺が泥棒したことをバラし、悔しがらせておこうと思った。
けど、岐阜の警察に睨まれたくないので、やっぱりこっそりやることにする。
用意するのは、泥棒に役立ちそうな道具となる。
幸い、俺のカード強化は割と万能で、応用しやすい。
泥棒に役立つ道具も、俺の発想次第といったところ。
まずは足音を消す靴に、光を反射しない黒い服。
靴はそのまま消音機能を付けて、服は黒く染めてから強化かな?
あと、逃亡用に煙玉とか毒煙玉とか。視界をさえぎったり、そのまま行動不能にするアイテムもあると便利か。
古い泥棒漫画に出てくるような鍵明け用の針金は……さすがに要らないか。俺にそんな技能はないし。
昔、「怪盗七つ道具」とかそんな名前を聞いたこともあったけど、その中身がどんなものかは覚えていない。
これは記憶喪失の範囲か、それとも俺の記憶力が残念なのか。
今となっては分からないよね。よね?