22-1 ゴブニュート・シーラー
幽暗の大蛇の情報を得るべく、出雲の国に向かった俺たちは、ちょっとしたゴタゴタを起こしつつも、無事に情報を入手し、持ち帰ることに成功した。
で、得られた情報から新たに合成を行った訳だけど。
「ジョブは間違っていないんだよな。シーラー、封印する者だから」
メイジに封印術式の情報を合成した結果、封印魔法の専門家になった。
ここまでは良い。想定の範囲内である。
ただ、その封印魔法というのが『捕食封印』という、非常に危なそうな名前。
ヤバい予感しかなかった。
「ま、まぁ、本人に詳細を聞いてみてから後の事は考えよう」
「可能なら、使う所が見たい」
だが、恐れていては何も始まらない。
カードモンスターはこちら側、仲間なので、まずは召喚して、話をしてみよう。
「≪召喚≫『ゴブニュート・シーラー』」
召喚したゴブニュート・シーラーは、見た目だけならメイジと同じ、魔法使いの杖を持ち、ローブを着た女ゴブニュートだ。
人と比べて背が低めで、耳が尖っている、一般的なゴブニュート。
外見的な印象はごく普通としか言いようがない。
「じゃあ、説明を頼むよ、錬」
「ん。捕食封印は――」
シーラーに錬と名前を付け、捕食封印について話を聞くことにした。
自分の使う魔法だけど錬は捕食封印について最低限の知識しか持っておらず、詳細については不明だったが、それでも今の俺たちよりは情報を持っていた。
捕食封印は、自分の体の中に対象を取り込み、じわじわとその能力を奪いながら相手を殺すという、普通に使うなら自己犠牲でもなんでもない封印術式だった。
ただ、格上相手となると封印の効果が効くかどうか不明になるし、下手をすると乗っ取られる、そういった危険性も有った。
当時の状況を考えれば、封印を行った雄総さんは間違いなく相手を格上と認識していただろうし、自己犠牲の精神で挑んだだろうと思われる。
格上を相手には使いにくい能力であるが、大蛇を自分の中に取り込んだ状態で術者が死ねば、おそらく大蛇も死ぬだろうというのが錬の予測だ。
雄総さんは大蛇を攻撃できるように、自分の体を使ったのである。
俺にはできないなぁ。術が使えないからではなく、心の問題で。
夏鈴が襲われたとか、殺されたとか、そういう事があってトントンだろう。
なお、この辺りの話はやる前の、基礎情報の確認にすぎない。
ここから、実際にやってみて、検証をする必要がある。
命に関わるリスクがありそうならやらせるつもりはなかったが、そうでないなら自分の目で確認したい。
凛音も見たそうにしているし、錬も問題無さそうにしているから、ここからは実演だ。
準備を整え、俺の用意したモンスターに挑んでもらおう。