21-25 対策会議
「それでは、本題に移りましょうか」
俺たちにとって、出雲の軍の話はただの雑談でしかない。
それよりも大事な事がある。
俺たちが出雲で調べてきた事。幽暗の大蛇に関する情報だ。
この話をするにあたり、署長さん以外にも岐阜市、尾張の国、三河の国、堀井組の連絡員を呼んでいる。
情報と基本方針の共有は大事だからね。
俺は予めまとめておいた情報とそこからの推論、作成した調書の写本、改ざんされた写本を関係者各所に送っておいた。
会議用の配布資料があれば、言葉にしなくても説明の漏れが無くなる。
連絡員を置いているとはいえ、関係者の中には気軽にこちらへ来れない人もいるので、配布資料の用意は必須である。
「書かれている内容を見ると、どう戦えばいいか、全く分かりませんよね。
いくつかの推論はあるのでそれを試す事になりますが、攻撃がすり抜けると言われると、打つ手が無さそうに見えます。
普通の蛇のように地面を這って動いていたのでしょうけど、そうすると地面はすり抜けの対象にならない、土を使った攻撃が有効かもしれないという話は納得できますが、それをどうやって行うかが問題です」
最初に署長さんが気にしたのは、大蛇の無敵能力だ。
何をしても攻撃が当たらない事に不安を感じている。
俺の方で対抗策をいくつか提案してみたが、それは本物を知らない人間の、机上の空論に過ぎない。
安心を得るには色々と足りていないのである。
「そもそも、調書の原本だって、信用できるか分からないっすからね。
書き始めたときに嘘を織り込まれてたら、それこそどうにもならないっす」
中には、調書そのものが役に立つか疑問視する声もある。
「相手も自分の弱点を残されたくないだろうし? もしかしたら調書でダメだったって書かれたことも、実は効果があるかも知れないじゃないっすか。
そう考えると、調書の中身はオリジナルでも話し半分で見といた方がいいと思うっす」
「実際は効いていたが、幻覚などで無敵の振りをしていた、そんな可能性もあるな」
トオルは相手の嫌らしさを理由に、調書を信用しなかった。戦闘経験豊富な桜井氏も、それに追従する。
言っていることにはなるほどと思う部分があるので、調書で無駄と書かれたことも、自分達で確認をすることに決めた。
自分の目で見聞きしたこと以外には、一定の疑いを持つ。
自分の見聞きしたものでも、他人とのすり合わせをするまでほ信用しない。
一度正しいと証明されても、後で新事実が発覚し、覆されることがある。
この場にはそんな考え方をする人が多い。
なんと言うか、頼もしいね。
下手をすると、幽暗の大蛇が現れようと、俺の出番は無いかもしれない。
楽をさせて貰えるのは良いことだ。
それでも自分が胸を張れるように、できるだけバックアップをしないとね。