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カードクリエイターのツリーグラフ  作者: 猫の人
境界の国、出雲
544/729

21-22 幕間:徳原翔洋の審問会

 徳原翔洋。

 出雲の国の最高戦力であり、隠岐の島における軍事の統括者。

 それが彼の立場である。


 そんな彼が、兄にして出雲の軍の恥部と裏で言われる兄の為とはいえ、土下座までして許しを請うた。

 この話が軍本部に伝わった為、彼は召喚状で呼び出され、軍の審問を受ける事となった。



「――と、このような報告を受けているのだが、内容に訂正すべき点はあるかね?」

「ありません」


 徳原が受けるのは審問であり、査問では無い。

 審問は状況を詳しく調べる為、関係者に話を聞く事。

 査問のような、犯罪行為・不正・過誤を調べる為に本人を呼び出すような事ではない。


 軍は徳原の行動に疑問を持ってはいたが、彼の行動を間違いとして問いただすつもりは無かった。



「では、何故そうなったのか? 理由を説明したまえ」

「あのまま放置した場合、隠岐の島にいる人間が全滅したからです」

「は?」

「あの、創という人間にあれ以上の無体を強いた時、彼は本気で反抗したでしょう。

 もしもそうなってしまえば、彼は迷わず島にいる人間全てと戦う事になりました。生き残りはいるでしょうが、その後のモンスター襲撃によりそれも蹂躙されます。結果、島の人間は全滅します」

「それが、今回の神託(オラクル)かね?」

「はい」


 それは徳原の持つギフトが理由である。

 ギフト『神託(オラクル)』。

 徳原の周囲で起きる大きな不幸を、彼に知らせるという能力だ。


 細かい発動理由は不明だが、彼がどうにか出来る範囲であるかどうかに関わらず、1時間後に起る事件の内容と、その事件の基点を知る事ができる。

 アンカマーが海からやって来る時は大体察知できる為、本格的な襲撃まえに準備を整え、彼が軍を率いて迎え撃つ。

 だからこそ、徳原翔洋は将軍なのであった。



「しかし……島一つ分の戦力を全滅させるほどの戦闘能力を持っているのか、彼は?」

「彼個人にそこまでの戦闘能力は無いと思います。強いですが、精鋭10人も当てれば難なく倒せる程度のはず、です。

 ですが、どうやってか戦力を用意する手段を持っていたようです。召喚系のギフトを持っているのかもしれません。実際、島に(・・)いるはずの(・・・・・)ない者(・・・)から、矢を射かけられていますし」


 創は魔弓部隊を使い、徳原兄とその腰巾着を撃った。

 だが、それは彼らにしてみれば不可解極まりない事なのだ。


 なぜなら、隠岐の島は島であり、入島した者は軍が全員把握しているのである。

 なのに、外から入ってきた形跡も無く、部下を用意して見せた。

 徳原のギフトでもその詳細は掴めてはいない。だが、それがとても危険な能力であると、徳原も審問役の者も恐怖する。

 詳細は掴めないが、島一つを全滅させる、それだけの戦力を用意できるという事なのだから。





「それにしても、厄介だな」

「義兄が面倒をおかけして申し訳ありません」


 審問は創の事だけで無く、彼の義理の兄にも及ぶ。

 勿論、徳原兄がやった事は軍でも問題視されており、これまでは徳原弟がフォローしてどうにか事なきを得ていたが、ここに来て大問題になってしまった。

 彼の行為を創が帰りの道中で喧伝した為、出雲から東に大きく広まってしまったからだ。


 この件でいくつもの苦情が周辺の国から寄せられており、出雲の国の立場が悪くなってしまった。

 表面化していなかった問題が噴出すると、そこに便乗した嘘吐きまで出てくるので、対応が非常に面倒くさい事になる。

 現在は寄せられた苦情の真偽を確認している最中であるが、この余計な仕事は国にとって大きな負担となっていた。


 問題を、小さく収められているから大丈夫だと、見て見ぬフリをしてきたツケである。

 ここにきてようやく、国や軍は愚か者に権力を持たせるデメリットを実感していた。



 出雲の国は二度とこういった事が起きないように、無駄な慣習により軍内部のパワーバランスを維持する危険性をどうにかしようと動くようになる。

 長年続いた慣習を排除するのは難しいが、それでもやらねば、同じ事が起りうる。


 出雲の軍が正常化するには、まだ数年の時を要するのであった。

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