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カードクリエイターのツリーグラフ  作者: 猫の人
境界の国、出雲
535/729

21-13 隠岐の島襲撃②

 モンスターが海からやってくる。

 この国では、珍しくもない話。

 だが、そんなに日常的に起こる話でもない。

 巻き込まれる俺としては、たまったものではない。



 安全第一。命を大事に。

 そんな方針なので、前線に出る気など全くない。


 それでどうやって戦うのかというと、回復要員として、後方支援を行うのだ。

 戦闘要員であるというのは、前に出て武器を振るったり攻撃魔法を撃ったり、盾で攻撃を食い止めるばかりではない。

 前に出た誰かが怪我をして、後ろに下がってきた時。そんな彼らを治療するのも、立派な戦闘行為なのだ。





「すみません! この人を助けてください!」

「あいよー。そこのベッドに寝かせて」

「お願いします! こいつ、俺をかばって……」


 何に襲われたのかは知らないけど、怪我人の数は結構多いようだ。

 さっきからどんどん送られてくる。


 現在、30人ほどの怪我人の相手をしている。

 俺は臨時の治療担当のため、兵士の総数も知らないし、敵についての説明もない。

 ディズ・オークのような奴ならさすがに説明してもらえると思うんだけど、それはたぶん違うのだろう。怪我が噛まれたようなのとか、3本の爪で引っ掛かれたようなものばかりだから獣系と推測できる。


 噛まれた方の怪我も、引っ掻かれた方の怪我も、深くなければ傷口を水で洗い、傷薬で簡単に止血し、包帯でも巻いて終了。

 深い傷を負った人には『ヒール』の魔法か、エルフ印と偽った、莉奈の回復薬で瞬間治療。こちらは傷口を洗うとかやっていたら死にかねないので、そのまま治している。


 魔法とかで治しても、すぐに動けるわけではない。怪我治ったからと言って動き出さず、大人しく寝ておけ。また怪我をして俺に手間をかけさせるな。


 面倒なのは、複雑骨折系。

 そのまま治そうとすると、骨が変な曲がり方をしたままになってしまう。添え木で伸ばしてから治さないといけない。

 こちらも重症度によって魔法を使うかどうかの判断をしている。

 悪いけど、死にそうにないなら魔法による治療はしないよ。



 序盤では多くの怪我人を出していたが、時間が経つと対処法が確立できたのか、暇になった。


「へー。翠の毛皮の狼ですか」

「ああ。魔法こそ使わないが、動きが早く力が強い。かなりてこずらされた。

 だが、数が少ないし、我らには“英雄”がいるからな。負ないぞ」

「“英雄”?」

「そうだ。他国に名が轟くほどの戦果はまだ無いが、それも時間の問題。

 越前の英雄はいなくなって久しいが、それ以上の英雄の名で、万民を安心させるだろう」


 同じく暇をしている兵士さんから話を聞く。

 どんなモンスターに襲われているだとか、出雲の国の英雄さんの話とか。興味深い情報を手に入れた。


 こちらも回復薬の情報を出したり、モンスターと戦ったときの話とかをしておく。

 そうすることで、より多くの情報を引き出す。


 互いに言えない話があるのは当たり前。

 それでも有意義な時間だったと思うよ。

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