2-09 法の庇護、返報性
やられたらやり返す。
人間関係の基本だ。
親に育ててもらった子供がいつか親の面倒を見る。
あいさつにあいさつを返す。
親切に対し感謝を言葉にするのも、そういう事だ。
良いことも悪いことも相手に返すのが大事なんだよ。
関係をしっかりするのであれば。
悪いこと、今回のような目に遭った場合、やり返さないのは非常にまずい。
都合のいいカモと思われ、付け狙われるかもしれないからだ。
しっかりと、俺がやったと分かる形で仕返しするのが大切なんだよ。
とは言え、ただ相手をぶっ殺すというのは短絡的すぎる。
遠距離から魔法を撃ち込めば店ごと潰してやれるけど、それをして俺が満足できるかどうかが問題だし、俺にどんな利益があるのかって話でもある。
あの場でスペルカードを使わず逃げたのも、俺に利益がほとんど無いからだ。むしろ手札を知られて不利になる。
ぶっ殺すのは感情的には収まるかもしれないけど、その後を考えれば最悪なんだよ。
周囲の反応、懐事情。あと、俺の個人情報の管理。
それらを見極め、俺が満足し、利益を得る形にする。
経済的にダメージを与えるのであれば、リリースしてない希少品、『魔晶石』とか相手の店に流し、後でこっそり回収すればいいんだけど。売る前ならそのまま金銭的な、売った後なら信用に大きな傷がつくし。
ただし今回、それはパス。
できるだけ俺に実益のある仕返しをしようと思う。
まぁ、泥棒をするだけだが。
俺が大垣に来たのは、情報と物資を手に入れるためだ。
うち、情報がまだ集まりきっておらず、まだまだ欲しい物資がある現状で、大垣市に出入り禁止を食らうことは……全く痛くない。
ほんの数日で理解できることだけど、この世界は俺の記憶にあるような、ネットやスマホで情報が拡散するような世界ではない。
テレビも無ければ写真も無い、そんな所だ。
多少の悪さをしたところで逃げ切るだけならどうとでもなるし、お隣の岐阜市に行けば情報も物資も手に入る。大丈夫だ。問題ない。
善良な一市民でも何でもない俺は、ここで法的に悪いことをするのに躊躇いが無いのだ。
実際、あの強欲店主は法で守られているだろうけど、俺は守られていないからね。
俺は法の番人、治安維持組織である警察に今回の件を訴えてみたが、流れ者の言葉だからとまともに取り合ってくれなかった。
いちいち記録するほどの事でもない、話を聞くだけ無駄という扱いで追い出された。
ここで相手を罰するとまではいかずとも、ちゃんと記録に残すぐらいの対応をしてくれていればこちらも良心に従い多少はマシな行動で矛を収める事にもなったんだけどね。
手加減とか、法に対する配慮をする気はこれで欠片も無くなったよ。
流民は法の庇護下にないと、警察が教えてくれたのだから。
あとは実力でどうにかするだけだ。
ああ、そうだ。
砂金はちょっと割増しにして岐阜市で売るか。
他所で売ったっていう記録も、今後を考えれば役に立つよね。