21-7 調書①
「ま、こうなるよなぁ」
「ある意味、分りやすいですね」
俺たちは証言が信用できないので、記録、文章化された情報も当たってみた。
通常、こういった情報は国が一括管理をするのだが、その集積される情報を編集する前の、未編集の物は大体現地に残される。
で、村に残っていた情報を確認してみたけど、こちらも完全に弄られている。
文章記録は破棄されているのではなく、弄られているのだ。
国の管理している情報なら大丈夫かもしれないけど、それを確認させてもらうには、俺に実績とコネが足りない。
ここで生涯戦い続けるならコネ作りに戦っても良いんだろうけどね。それをする気が無い以上、ただの調査じゃあ、ここで確認した以上の情報は手に入らないと思っていい。
「それでも分かる事はありますからね」
「ああ。ここまで入念に情報操作をした事が、ここに何かあるって事だろうからね。
それがブラフの為だとしても、奴が使った労力分の痕跡はあるさ」
ボロボロの古文書。オリジナルに目を通し、写本を作る。
写本は本を読ませてもらう代わりの労働である。
和紙は長期保存に向いているとは言え、そんなに読む人もいなかった本は朽ちかけていた。
未来に記憶を繋ぐ為、そのお手伝いだね。
たとえ、改ざんされた情報でも。
敵も然る者。
人の記憶だけでなく、紙の記録にも改ざんの痕が見られたのだ。
書いてある事はバラバラで矛盾だらけ。整合性がない。
しかし、俺が関わるのだから、出来る事は多い。
写本の仕事はちゃんとやるけど、それ以上の事もついでにやっておく。
「オリジナルをカードにしてコピー。改ざん部分を戻して、長期保存に耐えられるよう、耐久力を上げておくか。持ち帰るんだから、紙の状態も良くしていいよね」
「そちらの写本も作りましょう」
『改ざんされた幽暗の大蛇の調書』 → 『幽暗の大蛇の調書(+2)』
カード能力は、こういう時に便利だ。
改ざんされた原本を進化させれば、改ざん前の原本が手に入る。
内容に関わらず、ただの本なので、☆はたったの2つ。魔力コストも安く済んだよ。
敵もまさか、こんな方法で情報を抜かれるとは思ってもいなかっただろうね。
ただ、さすがにここから進化させても、書かれる事のなかった敵の情報が記載される事はないのが残念だ。
それができれば、調査も楽なんだけどなぁ。
そうやって正しい情報が書かれた調書に目を通すと、欲しかった情報がいくつも手に入る。
幽暗の大蛇はいつ頃現れたのか? そして何をしたのか?
誰が、どうやって倒したのか?
「雄総 潤一郎」とは何者なのか?
これらの疑問が氷解していく。
全部、ちゃんと載っていた。
「自分を使った封印術式ねぇ」
「……再現は出来ませんね」
もっとも、それは有益ではない情報だったりするけどね。