21-6 隠岐の島、到着
ヒューマン・ゴーレムの方にスパイクシューズを履かせていたのが良かったのか、大狼ベースのゴーレムは『強爪大狼』という、足回りの強い別の種族になった。
これまでの大狼は魔法系に強化していったけど、これはこれでアリだと思う。
例え魔法に弱かろうが、物理特化も捨てがたいからね。
それに、ゴーレムは魔力を動力源としているので、魔力消費タイプのモンスターにすると稼働時間が減ってしまいそうだ。
ゴーレムは物理系。
基本的にこの考えで良いと思う。
雨で予定は狂ったものの、もう一度準備し直し、出雲を目指す。
雨対策をしたとは言え、いちいち雨の日を狙ったりはしない。ちゃんと良く晴れた日に旅に出た。
さすがに2回連続で雨にやられるという事はなく、2度目の準備期間中に雨の影響が消えていた事もあって、2日目の夜には出雲に着いた。
移動ルートに関しては、京都から北上して日本海側の海岸線沿いにある山の目立たないところを通ったよ。
旅人や行商人はそこそこいたけど、車なみに早い大狼だからね。あまり噂にはなっていないはずである。
……嘘です。たぶん、何度も見られた気がするし、かなり噂になっていると思う。
最後は船での移動だったけど、これは近くの漁師さんにお金を渡し、送ってもらった。
島までの行き来は頻繁にあるようなので、二つ返事で船に乗せてもらえた。
当たり前だけど、漁師さんも島にある村に泊っているよ。着いたのが夜だから、そこから帰るなんて真似はしていないね。
さて。
出雲の国、隠岐の島に着いたわけだが、ここからどうするか?
情報収集という事で、まずは人への聞き込みだ。
俺は夏鈴を伴い、村のご年配の方々に話を聞いて回った。
「ああ、大蛇ねぇ。いたよぉ。わっちが、こう、ちんまい頃にねぇ」
「そいつぁワシの爺さんの、そのまた爺さんの頃の話だなぁ。もう、知ってるのは誰も生きていないねぇ」
すると、聞ける話は食い違う。
大蛇がいた、その一点は間違いないんだけど、時期は全員、バラバラなのだ。
10人から話を聞いたが、同じ時期を口にしたご老人は、一人としていない。
「夏鈴。どう考えてもさ」
「情報操作を受けていますね。しかも、こちらにそれが分かるように」
「だよなぁ」
情報が手に入らなかったわけではない。
だが、その情報の信憑性はほぼゼロになった。
人に聞いて分かる事など何も無い、のかもしれない。
俺たちの情報収集は、いきなり頓挫するのだった。