20-25 救済、のち反動③
まともな説明の出来ない相手に俺が取った手段は、以前作った『美肌鶏』への誘導。
これは今でも神戸町で厳重に管理されているんだけど、ニノマエ経由で多少は流通している。
その肉と卵を振る舞った結果、肌が若返ったと説明させたのだ。
それなら俺個人に突撃してくる奴はいないだろうと思っていたんだけど、そうは問屋が卸さない。
美肌鶏の出元が俺という事もあり、女性を中心に、予想以上に食らいついて来た。
「うちでは大規模な養鶏場の計画をしています! 最初の数羽分、鶏さえ頂ければ、あとはウチで全部やります! 利益は折半でどうでしょうか?」
「こっちは利益の6割を差し出します! ぜひウチに!」
説明して数日後。
岐阜市どころか、美濃の国中の養鶏場から「美肌鶏を扱わせて!」というオファーが届いている。
いや、そろそろ国の外からも話が来るかもしれない。
中には「経費分はいただきますが、純利益は全てそちらに差し出します!」とまで言う養鶏場まであった。
どうやら奥様から、自分たちが消費する少量だけ生産できればいいから確保してこいと、尻を蹴飛ばされている様子。
ニノマエの上客、そちらに流していた3世代目の美肌鶏を食べていた人たちも、「1世代目を食べたい!」と打診しているという。
話が面倒になり過ぎて、俺は頭を抱えるしかなかった。
「では、それは私たちで対処しましょう。自分の尻拭いですから、それが筋というものです」
「うむ。創君は、我らに方針だけ渡し、あとは任せてくれ給え。ジェネラルと言えど、戦闘しかできんわけでもない。大船に乗った気持ちでいるといい」
状況が混乱し過ぎているのでどうやって収拾を付けようか悩んでいると、浅野さんらがどうにかすると名乗り出た。
自分たちのせいで周囲が混乱しているのだから、責任をとると。
政治家と将軍、二人の新人は、「神戸町の利益をある程度で良いから確保していれば、美肌鶏が拡散する分には問題ない」という俺の方針に従い、すぐに動き始めた。
主に三世代目の美肌鶏を各地で生産できる状況を作りつつ、コネを使って神戸町のものはワンランク上という評判を流布していく。
利益の方は、最初にある程度まとまった額を貰って、あとは自由にすればいいという権利売却の方針で進められた。それが一番分かりやすく、誤魔化されないから、と。
そしてオリジナル、1世代目を求める声については、鶏は急に増えないのだから、しばらく待てと鉄壁の守りを見せた。
もともと対人が専門だったので、これまでの仲間には真似できない場面での活躍を見せた。
が。
「チキンカツ丼こそ至高!」
「いいや! 唐揚げこそ究極!」
そのモチベーションを保つため、そこそこどころか、かなりの鶏が犠牲になったようだ。
そして自分の気に入ったメニューで至高だの究極だの言って争っている。
優秀だからいいけどさ、子供のように争う姿を見ると、その活躍が非常に疑わしくなる。
俺は争う二人を背に、自分のメニューを頼む。
「チキン南蛮、タルタルマシマシで」