20-24 救済、のち反動②
「いっそ。このまま本物のニューマンというのになってみたいですね」
「おお、それはいい。成れるものであれば、是非成ってみたい。どうだろう、創君。我々は戦力として期待できると思うのだが」
「岐阜市はいいんですかね……?」
「もう引退が決まった身ですから」
「ああ。言われた通り、後継者を指名してきた」
ある程度、加齢による体の衰えを実感していた浅野さんと桜井氏。
二人は思った以上に若返った事で歓喜し、俺に忠誠を誓ってきた。
岐阜市の事はもう次の誰かに任せているので、自分たちはもう岐阜市を離れ、俺の村に行くと言っているのだ。
まぁ、国主の件が解決したとはいえ調査団を村に入れるという話もあるので、村に岐阜市の誰かが住むというのは、都合が良い話なんだけどね。
この二人が本当に役に立つのかは、少々どころかかなり疑問が残るので、躊躇しているのが現状だ。
そうそう。
国主の斎藤は、どこからともなく返却されたよ。
誰が、どうやってというのはよく分からないけど、浅野さんから聞いた話では生きたまま連れ攫われていて、岐阜市が村に兵士を送り込んだから返すという流れだったらしい。
人間だったのかどうかすら分からないほど記憶があやふやになっているが、「戦ってはいけない」「抗えば岐阜市が消える」と思えるほど恐ろしい何者かが、そういう命令をしていたというのだ。
おそらく、そいつが「雄総 潤一郎」なのだと思う。
斎藤は健康そのもので、ドール、モンスター化もしていない。
記憶の方もしっかりしていたが、どこに、誰に監禁されていたかは分からない。
食事とかはトレーで運ばれていたんだけど、そのトレーの運搬元は見えないようになっていたし、喋りかけても返事は無く、一度たりとも声を聞いていないので、相手が男だったか女だったかすら分からない。
何気に斎藤は、足音から相手の性別や体重を推測するという特技を持っていたけど、足音すらしなかったという。
つまり、何も分からない相手だった、という事である。
余談ではあるが、出された飯は、常に「ごはん・焼き魚・漬物・味噌汁」であったらしい。
魚は川魚、味噌汁はこのあたりで一番人気の赤味噌を使っていたが、それだけではどこの誰が犯人かなど推測もできない。
肉が出されていれば、まだ足を追えたんだけどなぁ。
肉は流通量が少ないからね。追いかけやすいんだよ。
だからこそ、肉は出さなかったんだろうな。
戻ってきた斎藤は、これまでに溜まった書類と格闘しているので、浅野さんに言わせると、2ヶ月は動けないという。
ま、本人の意思を無視した拉致ではあったが、そういった責任ある立場なので、頑張ってほしい所だ。
「ところで、創さん」
「ん?」
「若返りの方法は誤魔化しましたけど。けど、みなさんは分かっていて誤魔化されてもらった事は理解していますよね」
「そりゃあ、もう、ね。分かっているさ」
浅野さんと桜井氏。
二人が目に見えて若返った事で、俺の周囲は一時騒然となった。
権力者は不老不死を追い求める、などという昔話があったけど、今の時代でもその手段があるかもしれないとなれば、騒がしくなるのは必然であった。
俺からは「モンスター化した二人を救う時の反作用のようなもの」と説明したので、誰にでもできる事じゃないと、そういう認識を持ってもらった。
みんなは一応それで引いてくれたけど、その説明に心から納得したわけではなく、俺がそう言うのだからそういう事にしておいた、といった状態である。
つまり、「できるけどやる気は無い」と思われたわけだ。
事実だけどね。
でも、事情を説明できたのは、こちらの身内だけ。
残る岐阜市の面々には、そういった説明をしたくないので放置状態である。
それで、どうなったかと言うと――