2-08 砂金売却②
さて、この下衆をどうするか。
ブチ殺すのは簡単だ。
ゴブリン1部隊を召喚すればいい。
こちらにそんな手札があるとは考えていないだろうし、不意を衝くことが出来るだろう。
足りなければ夏鈴たちを呼んでもいいし、追加で草原狼などを召喚してもいい。
負ける、という事はまず無い。
ただ、ムカついたから殺すとか、そこまで単純に暴力に頼るのも情けない。
こんな下衆は殺した方が世の中のためだとか、そんな正義感に駆られるほど幼くもない。
それにここでこいつらを殺した場合、俺が疑われるのは必須。
そうしたら、大垣市で活動するのが難しくなる。それは避けたい。
では、どうするか?
俺の目的は、金を手に入れる事である。
ついでにこいつらにザマァをしてやりたい。
そこでちょっと、ネタを思いついた。
合法的ではないが、こいつらが酷い目に遭うような、そんな素敵な嫌がらせだ。
やる事は泥棒、犯罪だが、遠慮してやる気にはならない。
いや。
あちらの手に砂金が渡るのだから、代金は払ったという事だな。
数グラムとは言え俺の砂金を持っていくのだから、俺は商品を回収するとしよう。
方針が決まれば、ここに長居する気にはならない。
「さっきも言ったけど。それは俺の砂金だよ。返してもらう」
「ははは。大人しく従っていれば怪我をしなくて済みますよ。無事に帰りたいでしょう? さっさとその偽物が入った袋を渡しなさい。偽の金を金だと思い込むような哀れな犠牲者を出さない為にもね。
――お前たち」
俺は撤収するにしても、自然な流れを作るため、今一度、砂金を返せと店主に言う。
店主は俺が退く気配を見せなかった事で、強硬手段に出るようだ。強面の大男数人の中から2人を出口の方に動かし、無理やりにでも俺が持つ残りの砂金も手に入れようとする。
それにしても、最後まで金を贋物だと言い張るあたり、あっちの演技も徹底しているね。クソ下らない。
出口を押さえられるのは良くない。囲まれればゴブリンを召喚するだけでは戦力が足りなくなるかもしれない。
俺は座っていた椅子を振り上げると、店主の方に向かって全力で投げた。
大男たちの視線が店主の方に向くよう仕向け、出口を押さえられる前に、早々に建物から離脱を図る。
「この詐欺師ども! ひとの砂金を贋物とか言って奪おうとするとか、マジでありえねーよ!
そうやって人の物を盗んだり奪たりしていたら、そのうち罰が当たるぞ!!」
最後に、大声で悪態を吐く。
これぐらい目立った方がいい。大人しく逃げる場面ではない。
俺は騒ぎ、目立ちながら、貴金属買取店改め、泥棒の拠点から早々に離脱するのだった。




