20-22 救済⑤
「魔力切れとは、締まらないねぇ」
浅野さんらを助けるべく、強化を施していた俺。
しかし血玉を抜き取り進化させるには魔力が足りず、回復を待つ為に残りの作業は持ち越しとなった。
魔力の最大値は順調に増えているけどね。
☆3のコピーを一回、強化4回のあとに進化2回は重いって。
当初の予定だと、☆2だったから余裕がある筈だったんだけどね。
ボコボコにしてボロボロになった我妻と浅野さんらでは、同じに扱えなかった訳である。
二人同時進化の為に、回復した魔力をチマチマとカードに送る。
ドールをヒューマンに進化させることは既に他で経験済みである。一回やって様子を見る必要など無いので、同時で構わない。
2枚を進化待ち状態までするのにほぼ1日分の魔力注入をして、準備が整ったところでもう一度二人を呼んだ。
「1日だけの天国だったな」
「ええ。惜しいですね……」
呼び出された二人は揃って暗い顔をしている。
1日だけとは言え、若返った体が相当惜しいと見える。
これから血玉を抜き取り若さを失うとあって、気落ちした様子であった。
まだ若い俺には分からない話だけど、年を取ると若さの有難味がよく分かるんだろうなぁ。
「老化すると脅しましたが、元と同じぐらいか、もう少し若くすることも可能です。その、そこまで気落ちしなくてもいいですよ」
「本当!?」
「本当かね!?」
俺が、まだフォロー可能だと言ってみると、二人は勢いよく顔を上げ、こちらを見た。
ものすごい反応速度であった。食いつきが凄い。
「え、ええ。嘘ではありません」
「頼むわ!」
「任せた!」
二人は生きる希望を取り戻したようで、昨日のように高揚した状態になった。
どんだけ若さに飢えているんだよ。アラフィフだと、そこまで若くなりたいと願うものなのかね? 俺には分からないよ。
二人はもう準備ができているという事で、俺は魔剣部隊二人に目くばせしつつ、進化をさせることにした。
「じゃあ、いきますね」
俺がそうやって声をかけると、魔剣部隊の二人が、背中から浅野さんらの心臓付近にある血玉を剣で貫いた。
「な、なんで……」
「騙した、のか……?」
「いえ、殺す気はありません。最初に説明したとおり、血玉の抜き取りですよ。麻酔はありませんが」
カードのテキストを見て、二人の状態を確認。
無事に血玉が破壊できたのを確認してから、俺は二人を進化させた。
『ニューマン・ポリティシャン』(浅野):ヒューマン:☆☆☆:小:3日
ニューマン・ポリティシャンを1体召喚する。ポリティシャンは、政治に関わるものである。10年、20年先を見据えて動くことを生業とする。
『ニューマン・ジェネラル』(桜井):ヒューマン:☆☆☆:小:3日
ニューマン・ジェネラルを1体召喚する。ジェネラルは軍における最高指揮官である。多くの兵士を率い、一つの軍に束ねるだろう。