20-20 救済③
「その、そちらの言う操られている状態は解除できるのか? 解除できるとして、その方法に副作用はないか?」
桜井氏は、こちらを信用するかしないかの前に、俺がこの状況をどうにか出来るかどうかを確認してきた。
こちらの発言次第では、俺に治療を任せても良いとか、そんな事を考えているのだろう。
ただ、俺は嘘をつく気が無いので、信用して貰うというのには、けっこう難しい交渉をしなくちゃいけない。
「治す事は可能です。
ただ、副作用として俺に対する見方がガラリと変わると言いますか、俺に対し好感を抱くようです」
人格を維持したままカード化された終に聞いた話であるが、カード化されると、俺を主として認識するようになるそうだ。
絶対に従わねばならないというほど強制的な従属ではないが、それでも多少なりとも俺の言葉に従いやすく調整が入るらしい。
「なので、お二人には一線を退いていただく事になります。
後輩を育てる分には問題無いと思うけど、直接影響力を持たない方が良いですね」
人格、記憶を維持した状態が維持されるので、下手な嘘は言わないのが常識である。
こちらの情報を、開示できる範囲でさらっと説明し、相手の判断を待つ。
先に口を開いたのは、浅野さんの方だった。
「私は貴方を信用します。よろしく御願いします」
そう言って、深々と頭を下げた。
桜井氏は、そんな浅野さんをしばらく黙って見ていたので、てっきり浅野さんの後、様子を見てから決めると思ったのだが。
「では、私も頼もう。後は任せた」
浅野さんと一緒に俺の提案を受け入れた。
女性の後という、臆病者ともとられかねない状況は嫌だったのかもね。
男のプライドを守るべく、桜井氏もカード化を受け入れる事を決めた。
物事は、ごねられるよりもスマートに運んだ方が良い。
トントン拍子に話が決まれば、あとは俺がやる事をやるだけだ。
カード化は特に難しい事でもないから、そこはさらっと終わらせて、二人のカードを確認する。
『ポリティシャン・ドール』(浅野):モンスター:☆☆☆:小:3日
ポリティシャン・ドールを1体召喚する。ドールは、正しく自我を持たない人形と化した者である。
『雄総 潤一郎』の記憶を転写され、自我が汚染されている。
『ジェネラル・ドール』(桜井):モンスター:☆☆☆:小:3日
ジェネラル・ドールを1体召喚する。ドールは、正しく自我を持たない人形と化した者である。
『雄総 潤一郎』の記憶を転写され、自我が汚染されている。
うん。
ちゃんとモンスターだね。
では、念のためにコピーをとってから治し……お?
『ポリティシャン・ドール』:モンスター:☆☆☆:小:3日
ポリティシャン・ドールを1体召喚する。ドールは、正しく自我を持たない人形と化した者である。
『雄総 潤一郎』の記憶を転写され、自我が汚染されている。
……個人名が消えた。
そこはコピーできなかったらしい。