20-18 救済②
テーブルを挟み、俺は二人と対峙する。
まず、本人にどこまで自覚症状があるか確認しよう。
我妻はね、壊しちゃったからね。その後、コピーもせずに別キャラにしちゃった以上、元の正常な状態に持っていく事が出来なかったので未確認なんだ。
「ここにお二人を呼んだのは、戦後処理の話が主ではありません。
それ以上に、何故戦争に至ったのか。何故このような展開になったのかの説明をする為です。
単刀直入に言います。お二人は、モンスターによって偽りの記憶を植え付けられ、操られています。おそらく、戦争をこうやって終わらせる為に」
俺は対面に座る二人に視線を投げかける。
言われた浅野さんは多少は自覚があったのか、まさかという顔をして、桜井氏は俺が何を言っているのか分からず怪訝そうな顔をした。
二人の差分がなぜ発生したのかについては後で調べれば良いとして、今は聞き出せる情報を全部聞き出してしまおう。
「私は……あの悍ましい“化け物”を見た後から、自分らしい行動をとる事が出来ませんでした。
あの化け物を恐れるあまり、身動きできなくなったのかもしれないと思っていたのですが……」
「私にその様な自覚は無いな。いつも通り、岐阜市の為に働いている」
青ざめた浅野さんと、不愉快そうな桜井氏。
これは、操作された記憶とかの量に差があるからかな?
いや、いい。考察よりも、情報を開示して信用を得るのが先だ。
「私がそれを知っているのは、一度、実例を調べたからです。
その男は、左胸の心臓近くに黒い石ころを埋め込まれていました。魔法的な産物です。それがトリガーになっていました」
本当にあの石ころこと、血玉が人間の記憶を操作する為なのかは知らないけど、モンスター化しているこの二人には、間違いなくあの血玉が埋め込まれている。
俺は実物を懐から取り出し、二人に見せる。
「ただの石に見えるが?」
「魔法の素養がないと、分かりにくいでしょうね」
桜井氏の目には、ただの黒い石ころに見えるらしい。
「『幽暗の大蛇の血玉』……」
しかし、浅野さんの方は違った。
何らかの能力で、血玉の名前を言い当てた。
俺はともかく、浅野さんにはかなりの信頼を寄せているのだろう。
桜井氏は俺の発言に対し、半信半疑か疑いの方が強かったのだけど、一転して信用の方に感情が傾いたようだった。
自身の心臓近く、左胸を直接まさぐり――覚えのない、何か小さな物をを差し込まれたような傷跡を見付けた。
「ううむ。これではまるで……」
「岐阜市に損を与えようとしていた、でしょうか?」
二人は俺がいる事も忘れ、これまでの行動とその結果から、敵の意図を探り始めた。
岐阜市の内情とかも暴露しはじめ、普通なら聞けない人間関係なんかも説明される。
これ、聞いていて面白いから、しばらく黙っていよう。