20-17 結果
爆弾はいっぱい作る事が出来る。
で、作った後は誰でも使える。
だから魔法と違い、この情報が伝わったところで、俺が日本海側に展開された戦地へ連れて行かれる事は無い。
火薬を作ったから、ついでに銃火器にも手を出してみたけど……こっちは微妙で、量産に向かないから止めておいた。
銃身と弾に要求される加工精度が厳しいんだよね。
村のスミス達が旋盤を使って加工させてみたけど、時間効率が悪すぎる。
費用対効果を考えなくても良いとはいえ、魔剣部隊の斬り込み突撃や、魔弓部隊の超長距離射撃の方がよっぽど強いので、主力にはなれない。
銃火器関連の大量生産と大量消費は、少人数の村ではあまり意味が無い。
人口密度が低いし、火薬草の栽培場所には困らないし、今は爆弾の方が良いかなと考えている。
さて。
そんな爆弾に度肝を抜かれた岐阜市の兵士諸君だが、10も数える程度に時間が経てば、徐々に再起動をし始める。
しかしそれでも「何だったんだあれは!?」とか「戦わなくて良かった」とか、行軍中の正規兵にあるまじき姿をさらしている。
この状態を攻めれば、一気呵成に片が付くだろうな。
火薬、爆薬はすでに過去の遺物で、簡単に手に入る物でもないし。
一般人からはそっち方面の知識と経験が失われて、長い年月が経っている。
この反応も仕方がないと言えるだろう。
「気を付けーっ!!」
そんな騒ぎ出した兵士達の耳に、桜井氏のが届く。
訓練が行き届いているので、条件反射で身体が動いたのだろう。兵士達は一斉に口を閉ざし、直立不動の姿勢をとった。
乱れていた隊列すら、元に戻っていた。
「使者殿のデモンストレーションは以上である! 今、見聞きした物は極秘ではない! 周囲に広めて良い情報である! 繰り返す! これは機密情報などでは無い! 周囲に広めるべき情報だ!
では、我らはこれより岐阜市に帰還する! 準備は良いか! 行くぞ!!」
桜井氏の号令により、俺の爆弾に驚愕していた兵士達は一斉に動き出した。
鳥や獣の、散を乱したような逃走ではない。一個の軍という生き物の、凜とした振る舞いである。
すでに、爆弾への畏怖など見えはしない。
これが人の持つ強さだ。
集団で最大のパフォーマンスを発揮する、まとまりのないモンスターなどよりもっとも厄介な連中である。
モンスターの中には、ディズ・オークのように同種の厄介さを持つ者も居るから、そこを考えると憂鬱になるね。
人間種よりも身体能力の基本値が高いモンスターが集団行動までするとなると、こちらは数と技量で攻めきるしかないのだし。
今回の戦争中、それより以前からも、調べていた事がある。
桜井氏が寝ている間に、こっそり髪の毛を頂いて調べた結果、桜井氏は『黒』だった。
評議会の浅野さんも『黒』だった。
他の評議員は全員『白』である。
今回の行軍に付いてきた指揮官らも『白』である。
細かく調べる余裕はもう無いけど、それが今回の調査の結果だ。
ただ、一応だけど、彼らとは話し合いが可能であった。
もしかすると、それは擬態だったのかもしれないが、ちょっとだけ、可能性が見えている。
話し合いが通じる事。
相手の能力が『植え付け』であって『操作』ではない事。
だったら。
もしかすると、まだ間に合うかもしれない。