20-13 開戦前の演説を聞く
色々と言われたけど、強めの魔法で脅すのはアリという判断になった。
昔スタングレネードのためにと作った『火薬草』で火薬を量産できる体制は整っているというか、すでにストックがかなりあるので、それを使って派手な爆発を起こし、相手を脅すことにした。
『火薬草』についてはツッコミが入ったが、魔法ではなくアイテムが主体となるので、それを理由に連行される事は無い。
むしろ美濃の国に留め置いて、『火薬草』を量産させた方が都合が良いという話になる。
あと、スタングレネードは屋内用の装備だけど、屋外でもそこそこ効果はあるから、こちらも使ってみる事になった。
使う機会が今までなかったからね。こんな時にでも試してみるのは良い事だと思うよ。
これは別件だけど、『火薬草』は物が草だけに、何とか液状にしてガソリンの代用品にできないか研究したいと言われた。
言われた時は「その手があったか」と思ったよ。絞り汁では嵩張るし使いにくいからと、乾燥させて粉にしてから使っていたけど、液体は液体で使い方があったんだよね。
ガソリンの性質を持つように作った植物じゃないからさ。上手くいくかは知らないけどね。
けど、特定の目的のために作って、それ以外の活用法をまともに考えていなかった俺にとって、こういった発想の転換はいい刺激になる。
俺だけだと、何か欲しければその都度、専用の品を作ればいいやって考えてしまうからね。
「できる事」が多い分、対策が力押しになるというか、考えなくてもできる事が多くて考えなくなるというか。
「できない事」は、それでもできるようにしようと考えさせられるって意味で、大切なんだなぁ。
で、そんなふうに基本方針と予測される危険に対する対策を取った俺たちは、開戦の日を迎える。
形の上では、「攫われた国主」という伏せ札を使い、「国主救出」をお題名目に宣戦布告を行うという段取りだったんだけど。
……国主不在と、その国主を探すために美濃の国の他の都市――大垣や長良――が動いている話と、彼らが攻めようとしている村をすでに調査したって事実を流布しておいたので、誰もが宣戦布告の言葉を信じない。
戦後であれば、岐阜市が負けても視察できる事も併せて知らせてしまえば、何のために戦争するんだよって話に置き換わる。
軍と民衆を前に開戦前の演説をする浅野さんら評議会を、民衆は白けた目で見ていた。
そんな空気の中でも普通に演説し、正義は我にありと言うのはメンタル強すぎと思う訳だ。
俺だったら、諦めて別の話をするんだけど。
「操られている可能性が高いとなれば、それも仕方が無いのかもね」
「はい。署長さんたちも違和感しかないと、そう仰っていましたからね」
操られているから融通が利かないんだろうなと思いつつ、俺たちは市内数ヵ所で行われている演説を聞き流し、その後のための仕込みをするのだった。
……防ぐのは難しいとは言え、これから戦う村の長があっさり市内に潜入できる段階で、岐阜市に勝ち目は無いと思うんだけど。
そこはツッコんだら無粋かな?