20-12 信用するか?
戦争に関しては、岐阜市の軍人たちという対戦相手の協力を得られるため、勝つだけなら非常に楽になった。
しかしそれで楽になってラッキー、では終わらない。
予定が大幅に狂ったため、それに合わせて協力者たちへの通達、全体予定の再調整が必要になった。
細かく段取りを組んだ仕事だと、良い方だろうと悪い方だろうと、予定を変えるのが大変なのだ。
予定の変更を伝えると、聞いた人が最初に考えるのはただ一つ。
「本当に協力してくれるのか?」
ただそれだけである。
今回の予定変更は、相手の協力という不確定要素が大前提で肝心要となる。
身内、仲間だけであれば多少の揺らぎを吸収することができるが、相手側、信用できるかどうか分からない者の行動に賭けるとなると、何かあったら予定が総崩れになる。
なので、本当に協力してもらえるか、その協力を前提にするのが危険すぎないかと考えてしまう。
「いや、それも込みで予定を調整する」
「と、言うと?」
「相手も、ただ睡眠薬を盛られただけで負けました、とは言い難いだろうから。だから派手な魔法で度肝を抜いて、普通に考えて戦えば死ぬと思わせられれば、降伏にも説得力が出ると思うんだよ」
「……一応、その魔法についても聞いてよいでしょうか?」
「『火炎嵐』っていう、俺の使える中でも大魔法に相当する物かな。
ちょっと連発はできないけど、見た目が派手だから脅しにはちょうどいいだろ」
「オジキ、やり過ぎないように、お願いしやす……」
署長さんらとは直接顔を合わせての打ち合わせをしている。
で、相手を信用するかどうか、そこにどれだけの比重を置くかって部分で心配されたので、そこまで信用せず、いざって時の為に相手の心を折る手段もちゃんとあると説明してみた。
ただ、その手段を説明してみると、別の意味で心配された。
曰く、「それはやり過ぎじゃない?」と。
いや、口にはしないけど、タイラントボアを2頭召喚するよりはずっと穏当だと思うよ。
教えると大騒ぎになるから、本当に口にしないけどさ。
それに、もしも相手の降伏が嘘であっても、そのまま岐阜市にちょっかいをかける事は可能なんだ。
村を攻められる前に岐阜市の評議会を押さえ、戦争終結を宣言させるのは、そこまで難しい事じゃないと思う。
主力がいないうえに、俺の脅しで兵力は市内に分散しているだろうから。
そうやって説明をすると、今度はあからさまに安心された。
出撃した軍人らを魔法で脅すのと、岐阜市を攻め落とすのと。
俺としては、後者の方が大ごとだと思うんだけどな。
「オジキの魔法は、シャレにならないって聞いていやす」
「創さん。普通の魔法使いはそこまでの魔法を使えません。そのレベルで噂に聞いた事があるのは、既に故人ですが、越前の魔法使いぐらいじゃないですか?」
「思ったよりも、魔法使いが育ってない?」
どうやら、世間に流布している魔法はカードの☆で言えば3つか4つが上限みたいだ。
だとすると、俺の魔法を披露した場合って……。
「越前に贈られ、戦闘戦闘の毎日じゃないっすか?」
「日本海側の防衛線構築に駆り出されますね。間違いありません」
☆4つレベルでも、その可能性があるみたいだ。
うん。
基本的に、使う魔法は厳選した方が良さそうだね。