20-8 ひっかかりと確認事項
引っ掛かったのは、議会とかそういったものは浅野さん一人ではどうにもならないという点。
浅野さんはリーダー代理として動いているけど、本当に浅野さんがリーダーシップで周囲をけん引しているかって話なんだけど。
どうやってか、他の評議員らをまとめあげているんだから、その手段も調べないと。
上手くすれば、評議会を味方につける事もできるんじゃないかな。
浅野さんとの話し合いは、唯一無二の手段じゃない。
ただの、いくつかある方法論の一つなんだ。
それと、ちょっと話す間に熱くなってしまったかな?
戦争をするとか、こっちの独立を認めないとか、直接言われて冷静さを欠いていたよ。
よく考えたら、目的の幾つかは浅野さんとの話じゃなかったんだよね。
浅野さんが、自分の意志で話しているかどうか。
浅野さんが『ドール』に作り替えられていないか。
そういった不自然な点を探るのも目的だったんだよ。
抑えるべき点を抑えずにこうやって話し合いをしたってさ、ドール相手であれば簡単にひっくり返すだろうし、する意味が無いんだよね。
話し合いは残り時間わずかだけど、ちゃんと観察しよう。
浅野さんがドールかどうかについてだけど、発言の仕方、話の持っていき方から判断するのは立会人の人たちだ。
俺と違い、浅野さんと多少なりとも親交があった彼らは、浅野さんのキャラクターの面からその判断ができる。
人間の根っこは簡単に変わらない。
人が変われる最後のタイミングは子供が生まれた時というし、アラフィフの浅野さんはそれもかなり昔の話。
ならば国主不在というイベントを経たぐらいでは、人格の変化幅は小さいはずだ。
昔から彼女を知っている人たちに、本人かどうかの判断を仰ごう。
俺の側は、もっとマジカルでロジカルな方法で本人確認を行おうと思う。
人間をドールに作り替えると、作り変えられた側はモンスター相当になる。
で、相手の髪の毛でも入手すれば、それをカード化し、人間のものかモンスターのものかを判別できる。
ドールになっているかどうかぐらいは分かるのだ。
この方法の問題点は、相手が催眠術などによりマインドコントロールされている場合には意味が無い事。
あと、俺の前では毅然としていても、実際は誰かに弱みを握られここに臨んでいても分からない。
髪の毛のカード化による確認方法は、そこまで細かい事に対応していないんだよね。
流石に本人を殺してからカード化する訳にもいかないからなぁ。カード化で復活させても浅野さん本人が復活する訳じゃないし。
殺して確認、はやっちゃいけないんだよなぁ。
どうにか、蘇生手段としてカード化を利用できるようになると助かるんだけど。
そんな都合の良すぎる話は転がってないんだよな。