20-7 合同捜査の提案②
浅野さんらが戦争をするのは独立を阻止する目的もあるが、国主が俺たちに捕まっており、助け出すという理由もある。
村には居ないという事で、まずは戦争さえ終わっていれば村を見てはいいと提案した。
そして村よりもそれ以外の所に居る可能性を指摘した。
だが、それでも疑うのは政治に関わる人間の本能みたいなものだ。
村にいる可能性が僅かにでもあるのなら、そこを調べたいというだろう。
自分の目で直接見るまで信じられないのだ。
あと、たまに自分の目で見ても信じなかったりする。
そんな連中に対し、できる事がある。
それは、第三者を巻き込む事。
例えば目の前の浅野さんが信じざるを得ない相手に村を見てもらい、その人たちから「村には居なかった」と証言してもらうのだ。
あと、その第三者とは戦争などしないので、先行して村を見てもらう事も可能である。
岐阜市に見せてもいい、見せてしまおうというのだから、もう他の所にも見せたって構わないのだ。
「私が村に居ないと言っても、浅野さんは信用できないでしょう。
ですので、村に居ないというのを証明するために、先日のうちに他の方々へ村の視察をお願いしました。
その視察はすでに終わっていますし、そこから監視のために何人かの駐留をしていただいています。
大垣、長良といった美濃の国。尾張の国の一宮、尾西。三河の国の豊田、岡崎。それぞれから4人、合計24人が合同で村の捜査を行いました。
もちろん、結果はシロ。国主はいないというお墨付きを頂いています。
まだ、信用できませんか?」
この場合、信用の対象は名前を挙げた都市の人たちである。
信用しないと言えば、俺だけでなく彼らにも喧嘩を吹っ掛けた事になるので、簡単に信用できないとは言えない。
村を捜索する必要性はこの時点でほぼ無くなった。
かと言って、自分達も調べなければ周りと対等になれなかったりする。自分達だけ村の捜索の許可が下りていないとなれば、合同捜査のチーム中で一段低い位置になるからだ。
他で失点を取り戻せるとは言え、失点など無いに越したことはない。
信用はするが、同等の立場になるために村の捜査はしたいと言うのが岐阜市側の事情である。
つまり戦争が、足を大きく引っ張ったことになるのだよ。
先程の話し合いで戦争をすると明言して話終えたから、それを無かったことにはできない。
今更独立を認めると、手のひらを返す真似はできないし、それをするには浅野さんでは権限が足りないだろうからね。
何より、ちょっと状況が変わっただけで意見を翻すのは評価を大きく下げてしまう。先程とは別の意味で立場を落としてしまうのだ。
そもそもの話として、戦争をすると決めた時点で周囲の評価は地に落ちているから、今更という説もあるが。
戦争などという最終手段を最初に持ってくるのは、文明人じゃなくて未開の蛮族なんだよね。
あれ?
何か引っ掛かるな。
開戦までは時間があるし、急いで調べれば間に合うかな?