20-6 合同捜査の提案①
「国主の捜索で協力体制、ですか? では、村の中も見せる用意があるとでも?」
「ま、戦争後になりますがね。その後なら構わないでしょう」
こちらが勝てば、村の中を見ることが可能。
こちらが負ければ、村が消えるので岐阜市の連中は被害だけで振り出しに戻る。
そのあたりの説明はしないけど、戦後であれば捜査を受け入れると、俺は第三者らの前で浅野さんに明言した。
「独立さえ成った後なら、見せたところで問題はありませんし」
「ずいぶんな自信ですね。負けることなど無いと、こちらを侮っているのですか?」
「いえいえ。負けた場合は、こちらは皆殺しにされているでしょうし。止めることも出来ませんと、それだけですが何か?」
「降伏さえすれば、命は助けます!」
「降伏しなかったので皆殺しというわけですね、分かります」
「だから――」
「――誰も降伏しないという意味ですよ?
そもそも、降伏を決めるような状況なってしまえば村を維持する人数も足りませんし、降伏したところで先はありません。種族が違いますしね。
戦争になった時点で、勝つか皆殺しにされるかの二択なんですよ、こちらは」
「くっ!」
「ま、決まったことをいつまでもグダグダ言わないでくださいよ。
今は、国主捜索の話です」
そっちがやろうとしていることは、どれだけ正当化しようが他の種族の根切りだと、はっきりと言い切る。
終わった話を蒸し返すような真似をした浅野さんに冷たい視線を投げかけつつ、話を先に進める。
まず、斉藤が生きていると言う前提で話をする。
「まー、どれだけ村の中を探したところで無駄ですよ? 村の中に国主はいませんから。
そもそも、村の中に捕まえた人を置くという発想が俺には理解できませんし」
一番の問題は、斉藤を街に置く理由が無いことだ。
多くの人の行き来がある街中では、どうやっても攫った人を隠し通すなど不可能。
だったら、街の外に簡易拠点を置き、そこに捕らえておく方が現実的だと俺は説明する。
そうなると、行商などで街の外を行き来するフリをして、食料を横流しするという手法を思い付く。
探すとすれば、そういったところから範囲を絞っていくべきだろう。
なお、殺されている場合はどうにもならない。
死体など、顔を潰してから山に埋めるか川に流せばそれでお終いだ。
そうなった場合、見付けることは不可能だと俺は思っている。
「かなり具体的かつ、現実を見据えた意見ですね。参考にはなります。
ですが、具体的すぎませんか? まるでやった事があるかのように。
そして貴方はニノマエとファースト、二つの商店を経営していて、物資の流通も行なっている。となれば、貴方にもそれは可能だと思いますけど」
「ま、物理的に可能か不可能かで言えば、可能ですね。
ですが、俺には動機が無い。デメリットは戦争をしなくちゃいけない現状を考えれば、細かく言う必要も無いでしょう。
あと、こういった事件では「自分ならこうする」を前提に考えるのだし、自分に出来そうな手段とその対抗策を考え付くぐらい、誰でもしますよ。
もちろん、対抗策への防衛策まで考えるのが普通ですよね」
俺の話の内容から浅野さんはくだらない言いがかりを付けてきたが、そこはバッサリと切り捨てる。
確かに経験者だけど、そこはスルー。
それよりも、こういった時には何らかの方針が必要で、相手の動きを予測しつつその方針を打ち立てるわけだが、浅野さんらはそんな簡単な事もしていないのかな?
俺はそんな非難を込めた目で浅野さんを睨んだ。